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渋滞なしのアリの行列 マラソン大会に応用した数学力

使える数学(前編)

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NIKKEI STYLE

 ギャルの女子高生が慶応大に合格するまでを描いた「ビリギャル」のモデルとなった小林さやかさんが、様々な分野の専門家に率直な疑問をぶつけます。今回は数学編。大学院生になったビリギャルが、あなたにかわって勉強してきます。

大人になってから「数学は役に立つ」って思ったことある人、どれくらいいるんだろう? サイン、コサイン、タンジェントって便利だなあと、思ったことある? わたしのまわりではあまりいないんだ。でもね、AI(人工知能)の時代は数学が不可欠だといわれると、やっぱり気になるなと思っていたら、小学生に微分積分を理解させたすごい先生がいるという噂が飛び込んできた。東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授。早速お話を聞きに行ってきたよ。

――正直に言います。数学は中学のときから超苦手で、数学を勉強しようというモチベーションすら湧いたことが一瞬もありません。勉強する意味が全然わからなくて、あんなの知らなくても生きていけると自信満々だったし、実際大人になってからも「数学って使えるな」って思ったことがまだないんです。

「数学って課題解決に使えるんですよ。実際、私は世の中のために数学を役立ててきました。例えば僕の専門の一つは『渋滞学』。数学を駆使して、渋滞を解消する方法を考えるんです。だから、私のところにはいろいろなお困りごとの相談が舞い込んできます」

――私も困っていることがある! うちの給湯器は1日に使えるお湯の量が決まっていて、使いすぎるとシャワーが途中で水になったりするんです。

「え……それは引っ越した方がいいかも(笑)。それを数学的に……」

――それでね、お湯を使える量は決まっていても、お湯の温度は調節できるわけだから、浴槽にまず熱湯をためて、水を足して温度調節しようって考えた。でも、いつも適当にお湯の量を入れているから、なかなかちょうどいい温度のお風呂にならないんです。これ、数学で解決できるんでしょうか?

「もちろん! ちょっとした微分方程式を使えば全部完璧に計算できます。お風呂にためる熱湯の量と、時間がたつにつれて熱湯の温度がどれくらいの割合で冷えていくのか、そして水をどれくらい入れれば何度冷めるのか、暗算では無理だけど、15分くらいで終わりますね」

――なるほど、数学できる人はそうやっていろんなところで効率的に考えて動くことができるんだなあ。わたしはそうやって考えることのほうがエネルギー使うから、何度も失敗して。熱すぎて入れないことをいまだに何度もやっちゃう。経験則でなんとなくつかんでいく、っていう方法をとっているからいつも効率が悪いんだなあ。

「そう。使えるんです。このあいだもね、『さいたま国際マラソン』で数学を使ったある実験をしてみたんですけど、大成功で大盛り上がりだったんです」

――なにそれ、めっちゃおもしろそう! 数学×マラソン!!

「マラソンって、スタートのときにものすごい数のランナーが待っているじゃないですか。よーいドンで列の先頭のほうの人が走り始めてから、最後の人がスタートラインを通過するまで、ものすごく時間がかかるんですよ」

――ものすごくってどれくらい?

「通常は23分くらいかかるけれど、なんとか20分を切れないかという相談を大会の主催者から受けたんです。そしてみごと19分で全員を通過させました。やった!」

――おおお! なんと! 数字苦手すぎて、それどのくらいすごいかよくわかんないけどたしかに4分も縮めるって大変そう!! どうやったのですか?

マラソンの混雑を解消した「ふわっとスタート」

「ふわっとスタートです」

――え? ふわっと?(笑)

「ランナーをふわっと並ばせるんです。ふつうの感覚だと、とにかく早く走らせたいからできるだけぎゅっと詰めて並ばせてしまうじゃないですか。でも、それだと、前の人が走り出して自分の前にスペースができるまで動けないんですよ」

「それでわたし、計算してみたんです。そうしたら、最初から前の人とのあいだにスペースをあけてふわっと並ばせて、動きながらスタートさせた方がいいという結果が出たんですよ! 実際にやってみたら、みごと計算通りに19分に短縮できました。ちなみに、渋滞を緩和するためには、ぎゅうぎゅうに詰めずに、間隔を空けたほうがスムーズに動くって教えてくれたのは、アリです」

――アリって、あの虫のアリですか??

「アリの行列って絶対渋滞しないの。あるとき、人間とかかわるのに疲れてしまって(笑)、アリの行列を観察していたら、アリは間隔を空けて並ぶから渋滞しないということに気づいた。人間はすぐ前のめりになるけれど、アリはすごいんですよ。そう考えると、人間はアリ以下ですね(笑)」

――アリって冷静なんだなあ。そして、ふわっとってそういう意味ですね! たしかに、それでは全体のタイムが早くなるのは私でも何となくだけど想像できる気がする。ちなみに、ふわっとスタートにはどんな数学を使ったんですか。難しい計算が必要なの?

「足し算、引き算、かけ算、割り算の四則演算と、最後に一瞬だけ微分を使っただけです。この計算結果を採用してもらって、うまくいった。これはうれしかったですねえ。関係者の皆さんからも拍手喝采でしたよ」

――すごいね! なんか数学ちょっとおもろいじゃん、って思ってきました。上から目線でスミマセン。ほかにもいろいろなプロジェクトにかかわっているんですか?

「詳しいことは言えませんが、東京オリンピック・パラリンピックのプロジェクトにも入っています。例えばですね、人間は1メートル四方の中に2人以上いると混雑しているなと感じてしまうんですね。なので、人口密度が2人以下になるように、競技場の周辺の混雑緩和の計算などをしています」

「ほかには、空港の出入国の混雑緩和も担当しました。窓口の数とか並び方を考えるのも数学だし、顔認証の機械だって、裏側では数学が動いているんです」

サイン、コサイン、タンジェント、みんな役に立つ

――そんなに!? もはや全部数学じゃないですか。じゃあ、わたしがよくわからない「サイン、コサイン、タンジェント」もどこかで活躍してる?

「活躍しまくりです。サイン、コサイン、タンジェントは波のかたちをしているもの、つまり、ゆらぎのある対象を計算するのに使うんです。だから携帯電話の電波、それに地震や津波などの防災分野、さらに全地球測位システム(GPS)などはすべてサイン、コサイン、タンジェントで計算しています」

――まさか、私のスマホをあのサイン、コサイン、タンジェントが支えていたなんて……。

「数学って裏方なんですよ。みなさん難しい数学は学校を卒業して社会に出たら使わないじゃないかとおっしゃるんだけれど、実は全部数学で考えていますっていうことがすごく多いんです」

――でも先生、そういうものをつくる人だけが数学を知っていればいいんじゃない? 私に必要なのかな。

「知らなくてもいいんだけど、原理を知っておくと全然違うと思うんですよ。例えば、どこかに行って急にGPSが入らなくなったとします。数学の知識があると、なぜ入らなくなったかなと考えられる。コンピューターが壊れたときも、少し数学がわかればどういうエラーなのかな?と考えられる。原理を少しだけ知っていれば、事故を防いだり、だまされにくくなったりしますよね」

「それに、さやかさんのお仕事にも数学は大活躍するんだけどなあ」

――ちょっとその話詳しく聞きたいです。

「さやかさんは講演活動をしながら原稿を書いたり大学院に通ったりしていますよね。そのスケジュール管理だって数学だし、講演と執筆と研究をどのくらいの比率ですると10年後の利益をどれだけ上げられるか、といったことも、数学的に考えられる。いわゆるポートフォリオです」

――うわ、私の収入も上がっちゃうかもしれない。(マネジャーさんに向かって)私たち、数学やりましょう。もしかして、いわゆる文系の仕事でも、数学って必要なんですか。

「インターネット上に面白いサイトがあるんです。微分積分とか、関数とか、数学の何をわかっていなければならないのかを職業ごとに示しているんです。ちなみに、数学の最も幅広い分野を知っていないといけないのは物理学者。でもね、例えば文章を書くのが仕事の新聞記者は必要とされる数学の範囲が意外と広いし、大工や造園業の人も数学を仕事に使います」

「つまり、数学を学ぶのをやめてしまうと、職業の選択肢が狭まってしまうことがある。反対に、ある職業に将来つきたいなら、数学のこの分野は勉強しておいたほうがいい、という説明もできる。そうすると、とたんに数学を勉強するモチベーションがあがるでしょ?」

――この話、中学生や高校生のころに聞きたかったなあ。どうして学校では「数学は社会に出てからも役に立つ」って教えてくれなかったんだろう。

「それには理由があるんです」

(後編に続く)

西成活裕さん
1967年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。山形大、龍谷大、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授。専門は数理物理学。様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書「渋滞学」(新潮選書)は講談社科学出版賞などを受賞。2007年JSTさきがけ研究員、2010年内閣府イノベーション国際共同研究座長、文部科学省「科学技術への顕著な貢献 2013」に選出、東京オリンピック組織委員会アドバイザーにも就任している。趣味はオペラを歌う事、合気道。著書に『とんでもなく役に立つ数学』(KADOKAWA)、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(かんき出版)などがある。
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。2019年4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。

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