芸人かまいたち もらえ始めた仕事は能力以上のもの
関西で実力をつけた後に全国区の人気者になった芸人の、近年の筆頭が千鳥なら、その後に続く存在となったのがかまいたち。2018年に東京に進出し、ゲスト出演や特番などでキャリアを重ねてきた。20年には地上波初の冠番組『かまいたちの机上の空論城』(カンテレ、関西ローカル)がスタート。同年には公式YouTube『かまいたちチャンネル』を開設した。
21年は、これまでの活動が一気に花開いた年だと言える。3月には『かまいたちチャンネル』の登録者数が100万人を超え、9月に開催した2年ぶりの単独ライブ『ON THE WAY』は、配信チケットが1万8000枚を突破し、吉本興業主催のライブ配信で史上最高の売り上げ枚数となった。テレビでは、この秋に『ウラ撮れちゃいました』(テレビ朝日系)、『千鳥かまいたちアワー』『超無敵クラス』(共に日本テレビ系)と、MCでのレギュラーを3本増やした。
そんな彼らの関東地区初の冠番組となったのが、テレビ朝日の『かまいガチ』だ。20年10月から関東ローカルの26時台で放送が開始。21年4月からは、『アメトーーク!』の後となる木曜24時台に昇格し、放送ネットも拡大した。『かまいガチ』が始まってから約1年。収録前に話を聞いた。
笑いすぎて立てないことも
濱家 『かまいガチ』は芸人からしたら、夢のような番組というか。企画そのものに携われるので、ありがたいですね。収録終わりとかに「今度こんなのどうですか?」って、スタッフさんがアイデアを持ってきてくれるんですよ。まずその案自体が面白いし、全力で乗っかりたくなるものばかり。僕たちにも「最近やりたいの何かありますか?」とか聞いてくれるので、本当に楽しいですね。
山内 番組って、こっちが提案して「いや、それはちょっと」ってなるのが普通じゃないですか。『かまいガチ』は、スタッフさんが持ってきた案が「攻めすぎてんちゃうかな」っていうのがあって。ドラマだけを放送した回はまさに。僕ら主演で、黒木華さんが出演してくれて。視聴者の方が「あれっ?」って思うだけのやつ(笑)。
濱家 テレビ朝日のエライさんからは、「混乱を招いたね」って言われたって(笑)。楽しかった回でパッと思いつくのは、ザブングル加藤さんの新たな魅力を見つける企画とか、ジョイマンの高木(晋哉)さんとのラップバトル。ほんまに立たれへんぐらい笑ったけど、そういうのがたまにあるんですよ。
山内 いやいや、ラップバトルは、やってる側は地獄だった。後で見たら面白かったけど。
自分たちで提案したものでうまくいったものや、最近特に印象に残っている企画は?
濱家 山内の持ち込み企画の「見つめ合いは突然に…」かな。ロケ中に『ラブ・ストーリーは突然に』が流れたら、近くの人と見つめ合わないといけなくて、笑ってしまったら服を1枚脱ぐっていう謎のルール。あれはほんま、ライスの関町(知弘)さんやニッポンの社長のケツとか、芸人がみんな底力出したなっていう。
山内 反響が大きかったのは「下積み飯」。
濱家 そうそう。売れてない若手時代に食べていた貧乏料理を紹介する企画で、その頃聴いていた曲も用意してたんですよ。
山内 それで濱家のときに、当時僕らがよく聴いていたザ・マスミサイルの『拝啓』が流れてきて、僕も、天竺鼠の瀬下(豊)も、錦鯉の(長谷川)雅紀さんも、全員泣いてもうて(笑)。
濱家 あの展開は予想だにしなかった(笑)。
山内 和牛の水田(信二)は「泣いたわ」って言ってて、「えっ、見てくれてるんだ」っていう。
濱家 ははは! あの時はそんな展開もあったから撮れ高が十分で、山内の下積み飯はカットになったんです。その辺のスタッフさんの判断も信頼できるなって。「今日のマックス、ここやろ」ってなったら、そこで「もう終わりましょ」という判断をしてくれるスタッフさんがめっちゃ好きです。たぶん番組としては、早い時間帯での放送を目指すべきなんやと思うんですけど、僕的にはそんな期待されなくてもいいので、この時間帯で一生続けていきたい。
山内 僕はTVerで1位を取りたいですね。あれ、ランキングが出てるから分かりやすい。
濱家 これまで賞レースに出すぎてて、山内は「戦いたい」っていう変な欲が体に染みついてる(笑)。
山内 バラエティで1位って、超メジャー番組しかまだいけてないところなんで、狙いたいです。
レギュラー増加、まだOK
21年は、山内は『川島・山内のマンガ沼』(ytv・日本テレビ系)や『キングオブコント』の審査員、濱家は『ZIP!』(日本テレビ系)の水曜パーソナリティーに就任するなど、ソロの仕事も活発化。秋には新番組3本がスタートしたが、そんな現状をどう感じているのか。
濱家 新番組は、すごくバランスが取れているんですよ。『ウラ撮れちゃいました』は、VTRを見てゲストの方たちとトークする、どの世代の人が見ても楽しめる王道の番組。『超無敵クラス』は思い切り若い子たちに振ってるし、『千鳥かまいたちアワー』では濃いお笑いをやっていて。
山内 『超無敵クラス』は、他の番組にも生かせそうな若者の情報をめっちゃゲットできて勉強になりますし、今後テレビで活躍していきそうな下の人間も押さえられるので、一石二鳥ですね。
濱家 下の人間じゃなくて、年下のこれからの子たちっていうことね(笑)。でも本当、10代、20代の面白い子らが集まってるので、刺激的ですね。
山内 レギュラーが増えたことで、「激務で大丈夫ですか」って聞かれることもあるんですよ。でもむしろ、ちょっと落ち着いた感があるよな? レギュラースケジュールがないときのほうが、空いている時間にバババッって入っていたんで。だから、まだ全然大丈夫です。
濱家 21年は常に前進していなければならないくらい、仕事をさせていただいて。
山内 特に何かを頑張ったとかいう意識はないんですけど、急に評価してもらえるようになったというか。驚いたのが、9月の単独ライブのオンライン配信で、SwipeVideoっていうシステムを使ったんですよ。舞台上のカメラだけじゃなくて、楽屋とか、舞台監督さんの目線とか、無駄に天井からとか、いろんなところに10カメくらい置いて、見ている人が自由に切り替えられる。現実に今、そんなんできるんだって。大好評だったんですけど、地方の人も楽しめるし、こういうライブはまたやりたいですね。
濱家 基本的に、もらえ始めた仕事って、今の自分の能力以上のものやと思うんです。だから、その仕事に見合うようにスキルアップしていかないと。追われている気持ちのほうが大きいので、22年も少しずつ成長していきたいです。
山内 春にまたレギュラーが4本くらい増えてくれたら(笑)。まだまだ頑張れます。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2022年1月号の記事を再構成]
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