SKY-HI 天才と認めたメンバーを1位にしなかった理由連載 SKY-HI「Be myself, for ourselves」(21)

日経エンタテインメント!

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BE:FIRST誕生後に、SKY-HIの過去の取材から“今だから書ける”「THE FIRST」の富士山合宿や審査の話を改めて再編成して記事化するシリーズ。今回も、前々回「SKY-HI 『ブレない心』がデビュー後に絶対必要な理由」、前回「SKY-HI 勝敗を分けた『個』と『チーム』のバランス」に引き続き、富士山合宿の2つ目の課題「擬似プロ審査」から。[「BE:FIRST」や「THE FIRST」についてはこちら

SKY-HI(日高光啓)は新しいボーイズグループ結成のためにオーディション「THE FIRST」を開催した(写真:上野裕二)

この審査では、のちにBE:FIRSTとしてデビューすることになるSHUNTO(18歳)とRYUHEI(14歳)、そして次の段階の「VSプロアーティスト審査」で脱落したものの、SKY-HI率いるマネジメント/レーベルBMSG初のトレーニー(育成生)となったRUI(14歳)ら、中高生メンバーがパフォーマンスで鮮烈な印象を残していた。この3人をSKY-HIはどう見ていたのか。話の内容は取材時点のものであり、今の彼らの課題ではないことを付け加えておきたい。

「SHUNTOは、個人的には(『擬似プロ審査』で)1位でもいいくらいなんだよなあ……。彼はいい意味で、ものすごくパフォーマンスに対して不確実なところがあるんです。毎回、リハーサルと本番でやることが違うんですが、すごく良い方向に変わる。しかも終わったあとに『段(ステージ)上がってると楽しいなあ!』って、本当にいい顔をするんですよね(笑)。

でも、『段を上がった所でパフォーマンスしているから楽しい』っていうのは、プロの発想ではないんです。『擬似プロ審査』で高い順位を付けるのは、彼自身のためにはならない。例えば、今回RYUHEIが2位だったんですが、音楽に真摯に、パフォーマンスを完璧に、しかも感情を入れてやっていたRYUHEIより感情が強くなって、自分がしたことは言語化できないけど楽しかったと語るSHUNTOのほうが高い順位というのは、2人の成長のためにもならない。RYUHEIは今のままやっていけばこれからもすくすく伸びると思いますし、SHUNTOはこれから『すごく楽しかったけど、今回、あそこのアプローチちょっと違ったかなって思いましたね』という反省ができるようになるともっと成長するんじゃないかと思います。

この順位発表の際に、僕はSHUNTOのことを“天才”ってコメントしたんです。それまでは彼を評する言葉や基準が難しく、3次審査からずっとSHUNTOの順位が定まらなかった。どう評価していいか分からなかった。でも『擬似プロ審査』を見て、はっきり分かりました。彼は“天才”です。

合宿を通して全員に求めていたのが、クリエイティブに対して自らいろいろな発想を生み出してもらうことでした。そういうアイデアって、自分がそれまで聴いてきた音楽だったり、見てきたものだったりの掛け合わせで生まれてくるものだと思います。

例えばRYUHEIはまだ14歳ですが、本当にその引き出しがすごくそろっている。椎名林檎さんやK-POP、ロックバンド、あとは自分みたいな人間(アーティストとしてのSKY-HI)だったりから吸収したものがいろいろあるわけです。その話を聞くと『なるほどなあ』と思うし、その体験が螺旋(らせん)状のDNAのようにRYUHEIを形作っていると感じます。

でもSHUNTOは全く違うタイプです。『何を聴いてきたらそうなるの?』と尋ねても、出てくる名前はAAAと僕とUVERworldくらい。そこに合宿で出会ったメンバーと共有した音楽で、何かが開花した。ごくたまにいるんですよね。ルーツが自分でしかない、こういう天才が」