確かに「より安いものを」と節約を重視すべき場合もあるでしょう。しかし、豊かな人生を送るうえでは、思い入れのある何かを買うことや大事な人との会食、習い事の費用など、出費はある程度かさむとしても、そのときにしておきたい大切な体験もあるからです。何かの支出をする際は、できるだけ「『価値』にお金を払う」ということを意識するようにしてみてください。そうすることで、後悔することが少ないお金の使い方が自然と身についていきます。
我が子にみるお金の使い方、成功例と失敗例
「それだけで本当にお金の使い方が身につくの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ここで、我が家の子どもたちの例をちょっとご紹介したいと思います。
ある子は真面目に小遣い帳を付けるタイプで、お金の使い方も堅実。比較的節約家です。支出の際は消費か、浪費か、投資かを真面目に考えて、ムダな支出はほとんどしません。
そんな彼女はプロレスファン。試合を見に行くのが夢ですが、小学生時代はなかなか試合観戦に行けませんでした。そこで自分の満足度を上げるために、月額300円ほどの動画配信の会員となって試合はそこで「消費」として視聴。毎月数百円ずつお金をためていき、あこがれの選手がデザインしたパーカーを購入することにしました。自分でコツコツとためたお金で手に入れたそのパーカーは、彼女の中では価値のある「投資」となり、長い間、彼女がここぞと思う時に着る大事な一着となりました。
一方、別の娘は、小遣い帳をつけず家族マネー会議の時以外は三分法も実行しません。彼女はある日、急に「バイオリンが弾きたい」と言い出しました。ほどなく安く手に入るからと、ネットショッピングで見つけた1万円のバイオリンを自分で購入。数日弾いていましたが音もうまく出せず、あっという間にネットオークションで売却しました。結果的に購入時との差額となる8000円ほどの損をしました。これは支出の意味をきちんと考えずに、「安いから」と価格だけで買い物をしたことで起きた失敗例の1つです。
このような失敗を避けるためにも、支出を「価値」で見る習慣を作ることは、非常に有効だと思います。特に子どものうちから習慣化できると、金銭感覚もしっかり育ちます。とはいえ、難しく考える必要はありません。まずは子どもに支出の記録をつけさせ、三分法で判定させることを習慣化させていきましょう。
時には「浪費」もあっていい
なお、大人にも伝えていることですが「浪費」をゼロにする必要はない、と考えています。お金は頑張って稼ぐのですから、仮にどれだけ貯金がたまっていくとしても、自由気ままに使える余地が少しもないとしたら、果たしてそれが望ましい暮らしだろうか、との思いが根底にあるからです。
家計の三分法では理想の割合を唱えています。消費70%、浪費5%、投資25%というのがそれです。上記のような思いも踏まえて、少しですが浪費にも好ましい割合を設定した次第です。小学生くらいまでなら、子どものこづかいの5%というと、10円の駄菓子をいくつかという程度でしょう。それなら親が買ってあげればいいというご意見もあるかもしれません。けれど自由に、時には無計画にお金を使う体験もしておいてほしいと思うのです。もちろん、お子様本人がそれは嫌だというなら、無理に使わせる必要はありません。
子どもであろうと「時には浪費もまたよし」とあえてお伝えするのには理由があります。様々な経験は、気づきや成長を与えてくれるもの。浪費を含めたお金の使い方も、子ども時代の「練習」は後できっと役に立つはずです。
やがて大人になったとき、「節約、節約」の一辺倒で日々、暮らしを切り詰めることにだけ注力する。そうなっては切ないと思うのです。気持ちのゆとり部分として、たまには自分自身でそれと認識したうえで、節度ある「浪費」をする。そんなこともあっていいのではないでしょうか。一度しかない人生を豊かに過ごしていくうえで、ゆとりの大切さも子どもたちに分かっていてほしいと思っています。
