「ダンディーですね」は恥ずかしい

――その意味で、こういう格好はしない、こういうものは身につけないというものはありますか。

「柄のネクタイはしません。柄物に敵意があるわけではなくて、何を着ようか、何を合わせようかと、迷いたくないのです。自分の中ではスタイルにある種のシステムがある。毎朝きょうは何を着て何を合わせようということを考えて楽しんだりはしません。そういう意味で私はおしゃれではないのです。過剰な装飾もしませんし。だからこのインタビューも引き受けるかどうか、迷いました(笑)」

「白いシャツにソリッドタイ。形が決まっていると考える必要もないです。色はスーツならグレーやネイビー。ピンストライプもありますが、あんまり太いストライプですと、マフィアみたいになっちゃう。そうではなくても、そうだ、とか言われてしまいますので(笑)」

60年代のオメガ ジュネーブ ダイナミック(左)は中野ブロードウェイの専門店で手に入れた。犬モチーフのお守りリング(中)はふらりと立ち寄ったロンドンのRebusで。メガネはフィリップ・スタルクとアラン・ミクリのコラボモデル

――目立つ印象があるから引き算をする、という意識はありますか。

「ダンディーなどと言われたら、絶対嫌ですね。目立ちたい気持ちはゼロとは言いませんが、見てもらいたいように見える、それは恥ずかしい。そもそもですけど、私にとってファッションは隠れることだったんですよ。父の仕事の関係でニューヨークに住んでいて、帰国すると、日本の学校では非行がすごかった。帰国子女だったので過剰同調みたいな感じで私も特攻服屋で買ったカラーが高い長ラン(丈の長い学生服)を着ていました。でもやっぱり気質が合わず、ミッション系だとそういうのがないかなと期待して青山学院高等部に進みました」

「入学してみると靴はクラークスのワラビー。パンツはサーファーに人気があったブランド、ファーラーのホップサック(ざっくりした編み地のパンツ)。ポロのボタンダウンは普通のシャツではなくプルオーバー。みなが同じ格好。この雰囲気って、一体何だ? と思いました。青学の校門の向かいには大流行したボートハウス(アパレルブランド)があった。すると、おしゃれじゃないことがかえって目立つ。だから、洋服に本格的に気を使うようになったんです。いかに際立たないか、目立たないか。ずーっと、みなに同化して、隠れている、という感じで今に至るのです」

ストレートチップの靴は「派手めなほう」。革靴のほとんどがプレーントゥだ

――――アンダーステートメントな装いが中山さんらしさなのですね。

「時計も数は持っていますけど、重そうなこれ見よがしなものは絶対しません。好きなのは60~70年代のビンテージウオッチです。靴は今日はストレートチップですが、基本はプレーントゥばかり。指輪もこのお守りみたいなシグネットリングが好きなのですが、ごてごてした印象ならば付けません。目立たない、やり過ぎない。見え方として意識しているのはそこです」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


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