――パルミジャーニ・フルリエは、どのような消費者が支持しているのですか。
「我々が『ラグジュアリーエリート』と呼んでいるような方々です。ラグジュアリーに対する知識があり、時計愛好家としてムーブメントやフェースの仕上げにこだわり、これ見よがしな派手さを嫌うお客様ですね。求めるのはピュアなシンプルさ。そんなお客様に対する答えが、『リッチ・ミニマリズム』です。機能は高度。非常にシンプルで、フォーマル過ぎず、堅苦しくない形を目指しています」
――ご自身は「ラグジュアリー」をどう定義していますか。
「22年間この業界にいますけれど、ラグジュアリーの定義は難しい。私自身は、ラグジュアリーとは『最高であること』の表現だと思っています。クリエーティブ面でも職人技でも最高のものを得られる。その根っこにはヘリテージ(遺産)があります。歴史なしにラグジュアリーは語れません。また、感情に訴えるものでなければなりません。自分を甘やかすことができる、気持ちを入れられるものである、といった具合にです。私はいつも言っているのですが、ラグジュアリーとは値段ではなく、何をあなたに与えてくれるのか、そこが大切だと思っています」

ラグジュアリー追求 新作は「シンプル・控えめ」路線
――世代によってラグジュアリーの価値観は異なると考えますか。
「年齢ではなく、個人個人で違うものでしょう。子供のころから裕福な家庭に育って高い教育を受けていれば、早い時期からラグジュアリーな体験ができるかもしれません。自分で稼いでラグジュアリーを体験する人とは違う。美への感性もそれぞれ違うと思います。ラグジュアリーな品々もさまざまな形で提供されています。これ見よがしに派手なもの、控えめなもの、長く愛せるもの、短期間しか持たないもの。消費者によって解釈も選ぶ商品も全然違います。ラグジュアリーはその人の持つスタイルとか、感性によって変わってくると思います。ただ、最高のものを知っている人というのは、人とは違うものを欲しがりますし、それは大衆にはない感覚だと思います」
――2021年に発売した「トンダ PF」シリーズは極めてシンプルで、余分なものをそぎ落としたデザインですね。
「私は以前、ブルガリで働いていました。その時から、パルミジャーニはプレステージ感があり、職人技がすばらしい時計だと感じていました。ただ、スタイルのアピールがちょっとぼやけてきたなという印象がありました。お客様が進化しているのについていけていない。そこで、PFシリーズを考えるにあたって、25年前に購入してくれたお客様が今ならどんな時計を着けるだろうか、と考えてみたわけです」


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