もしあなたの組織がデータに頼れないのであれば、大きく2つ対策を打つしかない。①ノイズを防ぐルールや予防策を設けること②判断する人の質を上げること――だ。

まずはルールによって、ノイズをなくそうという対策だ。例えば、「精算が認められる経費は、良識の範囲内で決める」という規範的なルールではなく、「出張の宿泊費は、1泊につき1万円までは精算できる」など、誤解の余地をなくす取り組みだ。だがこれは、過度にやるとルールが多すぎてがんじがらめになる欠点がある。

であれば予防策だ。会議の際に第三者視点でノイズを指摘する人を置く。「誰かの意見に影響されないように、事前に匿名で意見を集めておく」など、具体的な策が本書には書かれている。

こうした組織的な対策に加え、判断を行う「人」そのものの質も高くなくてはいけない。直観的な判断はノイズを生んでしまうので、分かりやすい話に飛びつかず、物事を熟考することが求められる。そして幸いなことに、この力は訓練できる。

都合のいい結論はきっとデタラメ

熟考する姿勢を身につけるためには、カール・T・バーグストローム、ジュヴィン・D・ウエスト『デタラメ データ社会の嘘を見抜く』(小川敏子訳、日本経済新聞出版)をお薦めする。

世の中には我々を「惑わす」ような情報がたくさんある。①まどろっこしい言い回しをしたり、都合のいい情報だけを見せたりする②単なる嘘や間違えを伝える③さらには偏見が混じった分析を示す――などさまざまだ。

例えば「その問題は、1度『は』解決した」などと言われたら、「2回目は解決していない」ことを隠しているように思える。科学者の論文だって、もしかしたら都合のいい実験の結果だけを発表しているかもしれない。こうした情報は人を惑わし、嘘や偏見を信じさせる。

1度人が誤った判断をすると、長い間その誤った判断になびいてしまう。1998年に英国人医師が、MMRワクチンが自閉症の原因だという誤った分析結果を声高に発表した。科学的にその主張は否定されているにも関わらず、人々は嘘にだまされ、その後20年経ってもワクチン接種率は低いままだったそうだ。その結果2018年、米国では根絶されている麻疹が欧州で流行することになる。

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頼りない人間の判断、組織での対策が必須