経営判断をAIに譲れるのか デジタル化がわかる2冊【新任社長の苦悩】編 (6) DXの何が大事がわからない

トップがきちんと把握しておくべきマネジメントの基本とは何か。目の前の問題解決で実績をあげ、社長に上り詰めたとき、ふと不安がよぎったり自信が持てなくなったりする瞬間が訪れるかもしれない。社長の悩みに寄り添ってきた気鋭のコンサルタントが意思決定のよりどころになる経営書を紹介する。

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人工知能(AI)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、データアナリティクス、クラウド……IT用語は増えていく一方だ。「わが社のDXは、トランスフォーメーションまで至っていない」とも役員から進言されるが、そもそも既に会社の多くの部分にITが関わっているのに、一体「デジタル化」とは会社のどの部分に何をしたらよいのだろうか。今までだって、ERP(統合基幹業務システム)パッケージの導入をはじめIT化はすすめてきたはずだ。そのうえ「トランスフォーメーション」と言われても、何を指しているかが分からない。

そんなことを考えていると今度は別の役員が「コンピューターに判断業務はできないですから、過度にデジタルという言葉に踊らされなくていいのではないでしょうか?」とも述べてくる。確かに、目の前にあるパソコンが、自分の都合のいいように忖度(そんたく)した結果を出してくれたためしはない。

あたかも大革命が起きるかのようなネット記事と、目の前のパソコンでできることのギャップはとても大きいようにも思える。結局、自分は何を気にしなくてはならないのだろうか?

人の判断もきっと機械に置き換えられる

世の中の何が変わっているかが分からないというあなたには、アンドリュー・マカフィー、エリック・ブリニョルフソンプラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?』(村井章子訳、日経BP)をお勧めする。

本書の原題は『MACHINE, PLATFORM, CROWD』であり、直訳すると『機械、プラットフォーム、クラウド』だ。プラットフォームビジネスについてだけ語った本ではなく、それ以外に、機械の判断は人にとって代わるのか、クラウド(本書では不特定多数の人々のことを指す)に力を借りたほうが良いのではないかというテーマも扱われている。

音楽配信のiTunes、ライドシェアのUberなどのプラットフォームビジネスが我々の日常を大きく変えていることは、既に肌で感じられているであろう。が、実は多くの企業にとって、邦題のタイトルから外されてしまっている、「機械」と「クラウド」も無視できない。

「機械」が人間の判断業務にとって代わるのかという話は議論が尽きないが、少なくとも今あなたが思っているよりかは機械の方がずっと優秀かもしれない。本書には「ヒッポ(Hippo)」という言葉が出てくる。「いちばん高い給料をもらっている人の意見(Highest-paid person’s opinion)」の略で、あてにならない偉い人の判断をやゆするための言葉だ。偉い人の直観よりも、機械の判断のが正しいらしい。ワインの価格、不動産価格、判決の行方、調達価格、あらゆる領域において人間より機械の方が精度の高い判断をしているそうだ。

つまり社内の担当者や専門家の意見を聞くよりも、機械に判断してもらえる領域は機械にやってもらったほうが無難そうだ。

会社のパソコンとDXのつながりはなかなかイメージしにくい(イラストはイメージ=PIXTA)
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「何の判断」を機械に受け渡すか