喫煙ブースを今後3年で全店に

原点にあたる「喫茶室ルノアール」以外の業態も開発してきた。1999年に低価格形態のコーヒーショップ「NEW YORKER’S Cafe(ニューヨーカーズ・カフェ)」を開店。2012年には喫茶店「ミヤマ珈琲」をオープン。コーヒーを軸に据えながら、様々な業態で利用者との接点を広げている。現在では「Cafeルノアール」「カフェ・ミヤマ」などを加えて7業態を展開している(貸し会議室は除く)。

8つ目の業態として21年9月にオープンしたのがベーカリー(パン店)の「BAKERY HINATA」だ。粉から生地を仕込み、成形して焼き上げるまでの全工程を一貫して店舗でこなす「スクラッチ製法」を採用した本格派のパン店となる。第1号店の大宮大成町店(さいたま市)に続き、2号店が12月17日、神奈川県座間市相武台にオープンする。

「BAKERY HINATA」のパンは種類が豊富

「コーヒーとパンは親和性が高い。以前からパン店は視野に入れていた」と、小宮山社長は明かす。冷凍生地を各店舗に送って、焼き上げ以降だけを任せる方式を避けて、粉から各店舗でこねるという、手間のかかる製法を選んだのは、「作りたてを持ち帰ってもらえるのに加え、周辺の地域性にフィットしたパンを用意しやすい」(小宮山社長)からだ。

新業態に取り組む一方で、旧来の持ち味を見直す動きもみせている。その一例が喫煙との向き合い方だ。昭和の喫茶店にはたばこ臭いイメージがあったが、健康増進法や東京都受動喫煙防止条例を受けて、禁煙が広がった。「喫茶室ルノアール」も20年4月から、グループの直営店全店での紙巻きたばこの喫煙禁止に踏み切った。

しかし、「紙巻きたばこの喫煙を望む声が予想以上に多かった」(小宮山社長)。こうした利用者の要望を受けて、フロア内に独立した紙巻きたばこ専用ブースを設ける形での喫煙対応を広げる計画だ。既に約30店舗で実施済みで、「今後の3年間で全店舗での導入を目指したい」(小宮山社長)という。「たばことコーヒーは共に嗜好品としての相性がよく、心の健康という意味から、喫煙を求めるお客様は少なくない」(小宮山社長)。禁煙席での環境は守りつつ、喫煙ブースは導入店舗を広げていく。

ルノアールには紙巻きたばこ専用ブースのほかに、加熱式たばこ専用の喫煙席と加熱式たばこ専用の喫煙ブースも設けられている。飲食ルールにはそれぞれに違いがあり、加熱式たばこ専用喫煙席では飲食できるが、紙巻きたばこ専用や加熱式たばこ専用のブースでは不可だ。

東京都内では禁煙の飲食店が当たり前になり、その流れからいえば、これまた「逆張り」の取り組みだが、オンリーワンを意識する「喫茶室ルノアール」らしい選択とも映る。喫茶店・カフェの多くから喫煙スペースが姿を消す中、長年の愛用客「ルノアラ-」を呼び戻すうえでは、一定の効果が見込めるかもしれない。「当然、密閉ブースを使って空気のクオリティーはきちんと管理する」(小宮山社長)という。

「喫茶室ルノアール」の壁にはルノワールの複製絵画も

そもそも、なぜ「ルノアール」なのか。せんべい業から始まった喫茶店業態に、印象派の洋画家オーギュスト・ルノワールの名前というのは、いささか意外感がある。画家にちなんだ屋号を選んだのは、「ルノワール特有のあたたかい画風やアートの豊かさなどが喫茶室の付加価値を象徴していると創業者が考えたから」(小宮山社長)だという。人に寄り添い、オンリーワンを目指すのは、創業以来のDNAでもあるようだ。

長居を嫌わず、ビジネス客を懐深く迎え入れてきた「喫茶室ルノアール」。様々な商品・サービスが時代につれて移り変わっていく中にあって、そのぶれないありようは、「昭和」のたたずまいと共に味わい深い。