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「喫茶室ルノアール」のモーニングメニューの例

「喫茶室ルノアール」のモーニングメニューの例

「喫茶室ルノアール」ではパソコンのキーボードをたたく、スーツ姿のビジネスパーソンが珍しくない。電源や無料Wi-Fi(無線LAN)を備え、会社でも自宅でもない「サードプレース(第3の場所)」を提供しているルノアールへの信頼は厚い。長年続く風景だが、どうしてビジネス客はルノアールで仕事をこなしたがるのか。新型コロナウイルス禍が喫茶店・カフェ業界にもダメージを与える中、ルノアールのぶれない「流儀」をたずねた。(前回記事「商談花咲く『喫茶室ルノアール』 広い席間の理由」)

「どこの喫茶店・カフェよりも早く、電源提供を本格的に始めた」と、運営会社である銀座ルノアールの小宮山誠社長は振り返る。出先で仕事用のパソコンを使う人が増え始めたころ、電源を各テーブルに備える飲食店は少数派だった。長居を嫌ったからだ。しかし、ルノアールは「逆張り」のような格好で電源提供を広げ、居場所を定めずに働く「ノマドワーカー」たちの支持を得た。

フランチャイズ方式の出店を行わない直営店方式の運営だからこそ可能だったスピーディーな「逆張り」。利用客の長居を嫌わないオンリーワンの経営がノマドワーカーに「オアシス」を用意した。「ビジネスパーソンに寄り添うのは、ルノアールの基本的なスタンス。もともとホテルのロビーを意識しているので、同じような使われ方と理解している」(小宮山社長)。ゆったりした席間のスペースも仕事に打ち込みやすい理由だ。

「喫茶店」ではなく、「喫茶室」と名乗っているのも、単にコーヒーを消費する場ではなく、ルノアールで過ごす時間を思い思いに楽しんでもらいたいという思いからだ。本を読んだり、おしゃべりに興じたりといった、自分好みの過ごし方にパソコン仕事や商談も含まれる。「コーヒーの価格は安くないだけに、ここで過ごす時間への満足感を提供したい」(小宮山社長)

コロナ禍のあおりで出社機会が減ったこともあって、「個室でリモートワーク」を求めるビジネス客のニーズは高まる傾向にある。ルノアールでは仕切られた個室形態「ビジネスブース」の提供を2020年から始めた。1人用デスクが置かれ、仕事に集中しやすい。3時間パックで1050円(別途飲み物代が必要)と、リーズナブルな料金設定で、既に首都圏の11店舗でサービスが始まっている。小宮山社長は「お客様の利用状況をみて、増設を考えたい」という。

リモートワークの利用が目立つのは主に午前中だそうだ。「モーニングを頼んで、頭のさえる時間帯に仕事をこなすビジネス客が多い」(小宮山社長)という。モーニングは正午まで注文できる。中高年が増えるのは昼から。商談が増えるのは午後から夕方だ。週末には買い物途中での休憩が増える。

ビジネス客からの底堅い支持を象徴するのは、「貸し会議室 マイ・スペース」の存在だろう。喫茶室の一部スペースを区切って打ち合わせや会合に使える店舗併設の形で提供している。首都圏の22店舗で利用できる。今では貸し会議室が珍しくないが、ルノアールは30年も前から始めていて、その先駆け的存在だ。

社内に会議室があれば、用は足りるはずだが、会議室を持つ企業の利用も少なくない。「場所を変えると、新しい発想が浮かびやすいうえ、コーヒーでリラックス感も高まるという点が評価されている」(小宮山社長)という。スタッフに頼めば、すぐにコーヒーのお代わりを頼める点も喫茶室の併設会議室ならでは。「英会話の教室や趣味の集まりなど、ビジネス以外の利用ケースも増えてきた」(小宮山社長)という。

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