高専出身者は基礎がしっかりできている

さながら「技術道場」とも言える高専。花田さんは「AI関連の機械学習は面白かったが、成績はパッとせず何とかスレスレで卒業した」という。国立大の編入試験には失敗したが、神奈川大学工学部に入った。複雑系ネットワーク技術で先行する研究室があったためだ。大学4年の時、仲間からドリコムの学生向け起業支援プログラムに参加してみないかと誘われた。開発した動画解析アプリが認められ、投資を受けて14年に起業することになった。この際4人で起業したが、みな高専時代からの仲間だった。

大学4年の時、ドリコムの学生向け起業支援プログラムに参加した

花田さんのように、高専出身のIT起業家が増えてきている。コロプラ創業者の馬場さんは、都城工業高専(宮崎県都城市)から九州工業大学に進学し、その後に起業した。さくらインターネット創業者の田中邦裕さんは舞鶴工業高専(京都府舞鶴市)時代に起業。グノシー共同創業者の関喜史さんは富山高専(富山市)から東京大学工学部に編入学し、松尾研に仲間入りした。

松尾教授は「高専はデジタル人材の宝庫だ」と着目。「高専DCON」というアイデアコンテストを定期的に開催し、起業家も輩出している。今では「高専ロボコン」と共に、高専生が目指す全国的なイベントに成長した。

日本ではデジタル人材不足が深刻化しているが、その一因としてITの基礎技術に未習熟なことが挙げられている。あるIT企業の幹部は「大学の文系を出てプログラマーになる人は少なくないが、基礎が分かっていないので応用力がない」と指摘。プログラム言語にははやり廃りがあるが、ついていけなくなって辞める人が絶えないという。しかし高専出身者については「基礎がしっかりしているので、どんな言語にも短期間で対応できる」と評価する。

米国のハーバードやスタンフォードなど米欧の有名大学では、コンピューターサイエンス(CS)の教育体制が充実している。一方、日本の大学にはCSの専門学部そのものが少ない。インターネットで自己流に学ぶ人が少なくないため、質的なムラが出てしまう問題も残っている。花田さんは「高専出身者は基礎があり、何よりも手がきく」と話す。IT業界で高専出身者が活躍する場は、今後も広がりそうだ。

(代慶達也)