ITの基礎をたたき込まれた苫小牧高専時代

花田さんは東大出身というわけではない。母校は北海道苫小牧市の苫小牧工業高専。「ITの技術を基礎から徹底的にたたき込まれた」という、この高専時代がエンジニアとしての原点だ。花田さんは北海道中央部、かつて炭鉱の街として栄えた夕張市の隣の栗山町で生まれ育った。小学校5年の時に公務員の父親に買ってもらったパソコンにはまり、中学の頃からAIにも興味を持った。近所の知り合いから情報工学を専門に学べる学校があると聞き、普通の高校ではなく地元に最も近い苫小牧高専に入学した。

国立高専は全国に51校ある。1960年代、日本の製造業など産業界を支える技術者の養成を目的に誕生した。北海道から九州まで全国の工業都市中心に点在するが、東京都内には1校しかない。都会では高専生が少ないため、その存在を知らない人もいる。学費は年間20万円台で公立高校と比較すると高いが、国公立大学と比べると格段に安い。卒業後は約半数が大学の3年生に編入し、就職率も大手メーカー中心にほぼ100%。このため地方で人気が高く、理系に強い優秀な人材が集まっている。

「苫小牧工業高専時代にITの技術を基礎から徹底的にたたき込まれた」と振り返る

しかし花田さんは「高専はきつい。安易な気持ちで入学すると、ついていけなくなり留年する」と明かす。各科目の試験の際に1点でも点数が足りないと自動的に留年が確定するといい、同級生で情報工学を学んだ40人強のうち、ほぼ半数が留年し5年で卒業できなかったという。

情報工学といえばプログラミング学習だろうと思う人もいるだろうが、高専ではITのソフト・ハードなど幅広い分野で基礎から徹底的に鍛えられる。「プログラミングは2割程度で、電卓などハード機器も自分で組み立てたりした。実験の繰り返しで毎日リポートに追われる」という。

他の高専出身で中央官庁のIT担当の女性公務員も「高専では1年目から数学や理系教科が目白押しで、実習や課題が多かった」と振り返る。数学やプログラミングがあまり得意ではない人は留年したり中退したりするといい、この女性の場合「成績は平凡だったが5年満了で卒業せず、途中で入試を受けて国立大学に進学した」。ただ、高専から東京工業大学など難関大の理系に入学したり5年満了後に編入学したりする学生は少なくない。東工大の益一哉学長も高専出身だ。

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高専出身者は基礎がしっかりできている