天空の極彩色、中世悟りへの舞い妙心寺三門(京都市)古きを歩けば(21)

2012/3/6

歴史博士

400年を経て今なお彩色鮮やかな妙心寺三門の内部(京都市右京区)

その空間は通常、扉を閉ざし、光から隔絶されている。だが、ひとたび扉が開くと極彩色の世界が現れる。京都市右京区の妙心寺三門(国重要文化財)の楼上には、天人らが舞う装飾画が描かれ、今も400年前の鮮やかさを保っている。

今も鮮やかな羅漢の衣

人面鳥身で極楽に住み、妙なる声で鳴くという迦陵頻伽

朱塗りの三門は高さ約16メートル。狭い階段を上ると臨済宗妙心寺派本山の巨大な伽藍(がらん)が眼下に広がる。楼上の仏堂に入ると、天井で円を描く竜や、須弥壇(しゅみだん)上の観音、十六羅漢が目に飛び込んでくる。羅漢の衣は今も文様が鮮明だ。

人面鳥身で極楽世界に住み、世にも妙なる声で鳴くという「迦陵頻伽(かりょうびんが)」が対になって描かれ、祝祭感を醸し出す。


須弥壇上に並ぶ十六羅漢や観音。衣の文様も鮮明だ

天井には天人や楽器も描かれている。壁や柱は波や、金襴(きんらん)を巻き付けたような文様がびっしり。波間には、しゃちほこの起源との説もある巨大な怪魚が大きな口を開けて洪水のように水をはき出し、翼を持った竜も描き込まれている。絵は奔放な筆致で、緑、青、朱、黄、金の色彩が乱舞するかのようだ。