大阪はかつて首都だった。7世紀に「大化の改新」として知られる政治改革の舞台となり、官庁を集約して建て並べるなど先進的な構造の難波宮(なにわのみや)が造営された。この遺跡を守り伝えようとする研究者や市民の取り組みは、今も続いている。
古代から現代まで一望
大阪府庁の近くに緑に包まれた広々とした公園がある。犬を連れて散歩する人、楽器の練習をする人。この都心部にぽっかりあいた空間が難波宮跡だ。北隣には大阪城があり、その向こうに高層ビル群が見える。「ここでは大阪の古代、中近世、現代が一望できます」。30年以上、調査に携わってきた大阪市教育委員会研究主幹の植木久さんはこう話す。
公園には大極殿の基壇などが復元されているが説明板は少ない。詳しく知るには公園北西の大阪歴史博物館を訪れるのが一番だろう。10階でエレベーターを降りると、林立する朱色の太い柱が目に入る。原寸大で復元された大極殿内部だ。傍らの窓からは難波宮跡の全容が見下ろせ、何とも不思議な感覚にとらわれる。
同館では現在AR(拡張現実)技術を応用し、タブレット型端末やスマートフォンを使って往時の姿をよみがえらせる計画が進む。端末を手に10階の窓から遺跡を眺めると、画面に当時の建物の復元画像が映し出される仕組みだ。「来年春に公開の予定です。歴史の追体験ができますよ」。同館学芸課の積山洋さんが教えてくれた。