子育て環境、地域間で競え 鳥取県知事・平井伸治氏
Wの未来 男も動く
――10県知事で「子育て同盟」をつくりました。どういう問題意識があったのですか。
「いまの日本社会のあり方、経済発展のシナリオを考えると少子化を打破しなければいけません。生産年齢人口がしぼんで経済が縮小してしまいます。出産後の女性の働く機会を確保するための環境づくりを進め、(女性の労働力率が30代前半で低下する)M字カーブを緩やかにしていく必要があります。子どもを増やして将来の生産年齢人口を確保していかなければならないのです」
「日本の人口構造はいびつで、急激に子どもの数が減っています。それは日本の経済成長に陰りをもたらしている一因です。社会の構造を根本的に変えていくには立ちあがらなければいけないという焦燥感を10県知事が共有していました」
――もともとは広島県の湯崎英彦知事(47)と2人で決めて他の県に呼びかけました。
「湯崎さんには昨年8月の両県の知事会議で『子育てに焦点を絞って世の中を変えていこう。共同イニシアチブで実行できることをやっていこう』と呼びかけました。湯崎さんも『是非やろう』となり、子育て世代の知事がいる10県に呼びかけたのです。各県知事とはメーリングリストで連絡を取り合っています」
――湯崎知事が育児休暇を取った際は当時の橋下徹大阪府知事ら全国から批判もあがりました。
「知事には育児休暇制度などなく、勤務時間の設定もありません。湯崎知事は1日数時間の育児休暇を取っただけで、それに目くじらを立てるのはあまりに時代錯誤な考えでした」
――女性知事は参加していません。
「(現職の)女性知事とは少し世代が違います」
――知事自身は積極的に育児にかかわりましたか。
「今は大学生の息子が2人いますが、意識的に時間をとって思い出づくりをしようと海やスキーに行きました。自然の中で遊ばせるのが父親の1つの役割と思っていました。公務員だったので休もうと思えば休める恵まれた環境ではありました。家内が2人目を出産する時は長男を保育園に連れていくために時間給で休んだりしました」
「ただ、当時は猛烈社員の時代の名残がありました。自分自身としては十分やり尽くせていない反省があります。土日祝日もなく働きました。特に霞ケ関で働いていたころは、なかなか顔を合わせるのも難しい時期もありました。そういう時間は人生の大切なパートが失われたような、ぽかんと穴があいた感じのまま残っています」
――男性の育児参加は必要でしょうか。
「必要だと思います。私も育休を取りたかった。子どもが小さいころに時間を共有するのは大切。特に幼児期ぐらいまでの人間としての接触の豊富さは成長に影響してくると思います。人間が社会的動物として成長していく重要な過程は学童期までと言われます。今は核家族化が進んでいます。母子接触だけでは子どもの成長にとって良くありません」
「とはいえ、現実との折り合いは出てきます。部分的に子育てにかかわっていくことで女性の負担は軽減されます。社会として子育てをできる環境を整えて、各地域で工夫し競争しながらやっていかないとこの国は持ちません。『いつやるんですか。今でしょ』と世の中に言いたいです。これは社会の価値観の問題で変えようと思えばすぐにでも変えられます」
――第2次安倍内閣は子育て支援に力を入れる方針を掲げています。
「ものすごく期待しています。だからこそ参院選から間もない時に10県知事で声をあげました。イクメン議連に入っている田村憲久厚生労働相など、今の安倍内閣には子育て世代の閣僚が多い。今こそ旗を揚げてパラダイムシフトを起こしていくチャンスです」
――どうやって国を動かしていきますか。
「まずは率先的な行動を起こしたいです。例えば10県がまとまって子育て世代が必要な情報を得られるよう支援するポータルサイトを立ち上げたり、連携して政策の調査研究をしたりということもあります。同じ方向を向いて日本を変えていきたい。自分たちが行動し、国や社会全体にアピールしていく行動隊になります」
(聞き手は坂口幸裕)
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