就活生だけじゃない 社会人こそ必要な「自己分析」
みなさんは学生時代、就職活動の時に「自己分析」をしましたか? 実は、社会人になってからも自己分析は重要です。すでにお話しした通り、今は"働き方の過渡期"ですし、女性活用という意味でも"過渡期"になります。キャリアの組み立て方を会社任せにせず、自分で意志を持って切り拓く姿勢が求められます。その時、自分は何が得意で、将来的にどうなりたいのかをきちんと把握しておくことが不可欠なのです。
就職活動での自己分析は、学生時代に頑張ったことや、アルバイトやゼミでの経験を踏まえて、自分の強みや志望動機を導きだすものでした。これに対して社会人になってからの自己分析は、実際に仕事をする中で見えてくるものですから、よりリアリティーがあります。
何歳になっても自分が得意なことは何か、5年後、10年後にどうありたいのか…そうしたことを自分に問い続けてください。
ところで、未来のキャリアを切り拓く際に忘れないでほしいことがあります。それは、"やりたいことだけで考えない"ということです。もちろん、"やりたいことを大切にする""好きなことを仕事にする"という姿勢は素晴らしいことですよ。でも、アラサー以上で"やりたいこと"を重視して新しい環境に飛び込んだ結果、低賃金や長時間労働に直面し"こんなはずじゃなかった…"と後悔する人は少なくありません。
30代以上の転職では様々な情報を集め、多角的に分析したうえで進路を決定してほしいと思います。
自分自身の未来のキャリアを考える時、「確かな前提」と「予測不可能な前提」を整理しておいたほうがいいでしょう。
確かな前提とは、例えば"自分が年を取る"ということと、そして"両親が年を取る"ということです。介護が始まる時期はある程度は予測がつきますよね。ご両親が最後まで介護を要することがなければ幸せなことですが、ある程度は予測しておいたほうがいいものです。
一方、結婚や出産のタイミングをコントロールするのはなかなか難しいものです。今後のキャリアを考える上では、予測不可能な前提になります。
こうした予測可能なことと、不可能なことを分類した上で、自分が人生をかけて絶対にやりたいことと、絶対にやりたくないことを考えてみてください。
このあたりの整理ができていないと、将来のキャリアを考える際に"今の環境を変えること"が目的化してしまうのです。
昔、私が「とらばーゆ」という雑誌を編集していた時、"27歳症候群"という言葉がありました。27歳ぐらいになると、仕事もある程度慣れてきます。そこで大きな不満はないものの、"この仕事をこのまま続けていていいのかな?"と疑問を抱き、自分の環境を変えたくなってしまい、転職する人がいるのです。
ところが、冷静になって考えてみると、現職のままのほうが待遇も良く、本人の"やりたいこと"を実現するのに最も適した環境であるというケースが少なくありません。
未来のキャリアを考えようとすると、環境を変える――転職するということばかりに目がいきがちですが、今の会社の中であなたなりのポジションをつくり、活躍するということにも目を向けてください。大きなことでなくてもいいのです。例えば、組織の中で頼りにされるとか、特定のジャンルについて非常に詳しいとか…どういうポジションになると自分が組織の中で心地よくいられるのか考えてみましょう。そして、どうしたらそのポジションを形成できるのか道を探ってみてください。
人材コンサルタント。新卒でリクルートに入社後、「とらばーゆ」編集部などを経て玩具メーカーに転職し、新卒採用を担当。2009年に人材コンサルティング会社クオリティ・オブ・ライフに参加。企業の新卒採用や学生の就職支援のコンサルティングを行う傍ら、講演・執筆にも精力的に取り組む。2012年に退職し同社フェローとHR総合調査研究所客員研究員に就任。近著に『女子と就活』(中央公論新社、共著)などがある。http://www.yo-hey.com
(ライター 田中美和)
[nikkei WOMAN Online2013年8月28日付記事を基に再構成]
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