変わる事務職の未来像 必要なのは「リーダーシップ」
企業で働く女性には「事務職」として働いている人が少なくありません。、厳しいことを申し上げるようですが、今存在している「正社員・事務職」という仕事は、将来、日本国内では極端に減少していくでしょう。
近年、大企業を中心に中国やフィリピン、インドにコールセンターや経理、法務、人事などの管理部門業務を移管する動きが出てきています。
例えばアジア本社の経理部門をフィリピンにおき、地域内の経理処理や給与振込をオンライン上で行ってしまうのです。パソコントラブルを解決するためにヘルプデスクへ電話をすると、インドのサポートチームにつながるといった具合です。給与水準や社会保障負担が低く、英語・日本語ともに堪能な人材が多い場所に業務をまとめれば、コストダウンにつながり経営効率もいいからです。
そうなると日本人は今の給料を現状維持することは難しくなりますし、居住地域も日本以外になることを覚悟しなければいけません。
もし、あなたがそうした外国人の事務スタッフを取りまとめるマネージャーであれば、日本での勤務が可能になるかもしれません。そういう人は貴重な人材なので、どこで働きたいかという意見がある程度、聞いてもらえます。そうしたポジションに必要となるのは、現場で働く事務職の現地のプレーヤーをまとめあげ、効率的な事務処理工程を設計する能力です。そうなると語学力はもちろん、高いリーダーシップが求められます。
20代、30代の女性にはリーダーシップと聞いた途端に「私には関係ない」と思考停止状態になってしまう人が多いのですが、リーダーシップとは一部の限られた人だけが持っていればいい能力ではありません。すべての人に必要な能力ですし、訓練次第で身に付けることができます。
リーダーシップとは、問題を解決するために、何をするべきかを考え、周囲を巻き込みながら行動することです。リーダーとは、決して、「自分の意見ばかり主張する人」でもなければ、「他人に指示ばかり出して自分は手を出さない人」でもありません。
先日、電車でこんな光景を目にしました。杖を突いたおばあさんが乗ってこられましたのですが、席は空いていません。でも、半人分くらいのスペースはあったんです。その時、立っていた若い女性が席に座っている人に「すみません。もう少し詰めていただけますか?」と声をかけたんです。そのおかげでおばあさんは座ることができました。物腰柔らかい言い方で、周囲の協力を得る工夫が素晴らしいと思いました。
例えばオフィスのプリンターの調子が悪い時に、「誰かが直してくれるだろう」ではなく、自分から担当部署に連絡して修理を依頼することも"リーダーシップの発揮"です。ささいなことでもいいのです。身近な問題を一日一つ自分の力で解決することを意識するだけでもリーダーシップは訓練されます。
そして、小さな問題を解決できる人は、次第に大きな問題を解決することができるようになっていきます。それが、自分のキャリア形成や人生の問題を解決するためにも必要なスキルなのです。
この人に聞きました
キャリア形成コンサルタント。93年からマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に17年在籍。コンサルタントとして働いたのち、人材育成および採用マネージャーを務め、11年より独立。現在はキャリアインタビューサイトMY CHOICEを運営し、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動を行う。著書『採用基準』(ダイヤモンド社)は10万部を突破。
(ライター 田中美和)
[nikkei WOMAN Online2013年5月15日付記事を基に再構成]
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