ラズベリーの国の新しいお菓子
世界のおやつ探検隊
2013年3月、千葉市・幕張メッセで「FOODEX JAPAN(フーデックス・ジャパン)」が開催された。今年は日本を含め66の国・地域から出展があったという、アジア最大級の食品・飲料の展示会だ。
この展示会、探検隊は結成以来、毎年訪れている。数十もの国の食品メーカーが一堂に会しているのだから、珍しいものが続出するのでは!と最初は胸を高鳴らせたもの。
しかし、それは考え違いだったとすぐ判明。海外の出展者は、日本のマーケットに商品を売り込むことが目的であるため、なかなか「その国ならでは」の珍しいおやつを見つけるのが難しいのだ。もちろん、理由は日本では売れないから。
ある時、ミャンマーの出展者のブースも見かけたが、試食品として出されていたのは、正直あまり美味しくないポテトチップスだった。どうせなら、ミャンマーらしいおやつを見たかったなぁと思ったのを覚えている。
それでも、何か発見できるのではと、今年も潜入。そこで真っ先に目に入ったのは、セルビア(セルビア共和国)のお菓子だ。
セルビアは、北海道ほどの大きさの国。バルカン半島のハンガリーとギリシャに挟まれた地域にある国といったら、だいたいの位置をイメージしてもらえるだろうか。
実は、セルビアのブースでまず目についたのは冷凍フルーツだった。ブースには、冷凍フルーツを扱う会社が何社か出展していて、そのうちの1社に話を聞くと、「セルビアは、ラズベリーやプルーンの世界有数の生産国なんですよ」と教えてくれた。ラズベリーの生産量は世界第3位とのこと。
そうした国の特産品と結びついたお菓子があった。「ジェイク」というビタミンC入りタブレットだ。ラズベリーをはじめ、ブドウやピーチ、オレンジ、マンゴーなどのフレーバーがある。パッケージもなかなかファッショナブル。
メーカーの担当者に話を聞くと、「本国では、モデルなどのセレブが愛用しているんですよ」と雑誌の切り抜きを見せてくれる。食べてみると硬いラムネのようで、それぞれ異なるフルーツの味がして、なかなか美味しい。
ちなみに、「どのフレーバーがセルビアでは人気なんですか?」と聞くと、やっぱりラズベリーが一番。黒スグリ(カシス)とココナッツを合わせたものも人気が高いそうだ。
日本だったら、こうしたお菓子のラインナップには絶対にいちごフレーバーが欠かせないところだろう。冷凍フルーツ会社の取り扱いリストにいちごもあるため生産量が少ないわけではないだろうに、ジェイクのライナップにはない。とても現代的なお菓子だけれど、少しセルビアという国が垣間見られた気がする。
さて、次に目に留まったのは南米エクアドル(エクアドル共和国)の袋菓子。こちらは本州と九州を合わせたほどの面積だそう。南米大陸の北西に位置する。
中南米にはバナナを主要作物とする国が多いが、エクアドルは世界でもトップ5に入る。目に入ったのはそのバナナを使ったバナナチップだ。料理用のプラタノ(英語ではプランテイン)というバナナを使ったチップスは世界各国にあって、これまでも何回かコラムに登場しているが、目を引いたのは6種類ものバナナチップがずらりと並んでいたため。
「バナナチップにどんなバリエーションがあるの?」と近づいてみると、ガーリックやレモン、チリといったフレーバーの違い以外に、「熟したバナナ(ライプ)」というタイプの製品があった。なるほど! 考えもつきませんでした。
さて、人通りがまばらになった場所で、なんだか懐かしい気分になるお菓子を見つけた。西アフリカの国、ブルキナファソのゴマ菓子だ。ブルキナファソは、エクアドルより少し大きいぐらいの国。フランス領だった時期があり、フランス語が公用語として使用されている。
実は、ブルキナファソは、タンザニアやナイジェリアなどと並びゴマの主な生産国なのだ(大半はゴマ油用らしい)。ブースでは白い砂のような細かいゴマが展示されていた。
そして、その前にあったのが、ブルキナファソ版ゴマおこし。環境も文化もまるで違う遠い国なのに、日本そっくりのお菓子があることが新鮮。食べてみると、がっちりと蜜で固めたものが多い日本のゴマおこしに比べ、さっくりと軽い食感。あまり甘くなく、上品な味わい。
とにかく「おもしろいもの」を見つけようとしていた以前なら素通りしてしまっていたようなブースだったけれど、こんなところにも世界のおやつのおもしろさがありそうです。
今回のおやつの生息地
Webサイト:http://www.republicadelplatano.com
[Webナショジオ2013年3月15日掲載]
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