9月下旬、近所のスーパーで購入したのは表の17品。メロンとスイカは野菜に分類されることもあるが、果物売り場に多く並んでいたので焼いてみた。
桃、イチジク、ナシ……。今まで焼いたことがないものからカットしてフライパンで焼いた。次第に果肉が透き通ってきた。果汁が焦げるジューッという音と、香ばしくて甘い香りに期待が膨らんだ。
両面に焼き色がついた熱々の果物は口に入れると、食べ慣れた生とは違う味や食感に変わっていた。「おいしい」。思わず声が出た。
予想外の変化をしたのはネーブルオレンジとキウイ。ネーブルは焦げの苦みがアクセントになってオレンジピールのチョコレートがけ、キウイはトマトを食べているようだ。普段はドライフルーツとして食べるプルーンはジャムのような甘さになり、生やドライより食べやすかった。
ただ、全ておいしかったわけではない。スイカとレモンは「とてもひと様にお勧めできない」と思った。スイカはただ熱くなっただけで、果汁が抜けて、冷めても残念な味や食感に。レモンはさわやかな味を期待して思いっきりガブッとかじったところ、酸っぱさで身震いしてしまった。
スイカやレモン以外はおいしくなったような気がするが、何が変わったのか。参考にしようと焼く前後の果汁を搾って、アタゴ(東京都港区)の「ポケット糖度計PAL―J」で糖度を計測してみた。
するとスイカを除き、焼いた後の果物は糖度が上がっていた。とはいえ、人が感じる甘みは酸味などにも影響されるため、糖度とは必ずしも一致しない。果肉のサクサク感が楽しい果物もやわらかくなるなど、食感も変わる。
生とは違う味覚に出合えることは確かだが、旬の新鮮な果物を焼くと本来の魅力を失ってしまい、もったいない気もする。焼くべきか、焼かざるべきかの判断は難しい。独りよがりにならないように、果物に詳しいシニア野菜ソムリエの渡辺康子さんを訪ね、評価するのを手伝ってもらった。