プロ野球シーズン佳境! 注目の南国スイーツ
世界のおやつ探検隊
この春盛り上がったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。3連覇を目指した日本は惜しくも準決勝で敗れたが、その相手がプエルトリコ。カリブ海に浮かぶ島々からなる米国の自治領だ。
試合を見ながらプエルトリコの料理ってどんなものだろうと思っていたところ、2013年2月に東京・西麻布にプエルトリコ料理のレストランがオープンしたという話を聞いた。お店を手掛けるのは、なんと横浜DeNAのアレックス・ラミレス選手とその夫人リズさん。
そこで早速、プエルトリコのおやつについて探検すべくラミレス夫妻のお店「Ramichan CAFE(ラミちゃんカフェ)」を訪れた。
出迎えてくれたのは、オーナーのリズさん。ラミレス選手はベネズエラ出身だが、リズさんの出身地はプエルトリコなのだ。7歳の時に米国に移住したそうだが、お母さん直伝の母国料理をこの店で出している。
米国の自治領だけあって、プエルトリコの料理もかなり米国の影響を受けているのかと思いきや、「プエルトリコのデザートといえば、なんといっても『フラン』ですね」とリズさん。全卵とコンデンスミルク、エバミルクを使ったプリンの一種だ。フランはスペインの代表的デザートのひとつ。プエルトリコが19世紀まで同国の植民地だった影響なのだろう。
フィリピンの「レチェ・プラン」に似ているが、蒸し器に入れて作るレチェ・プランとは異なり、フランの材料を流し込んだ型を載せた容器にお湯を張り、オーブンに入れて焼く。
「まずは、砂糖と水を火にかけて作ったカラメルソースを大きなバットに入れて、こんな風に固めるのよ」と、リズさん自ら実演して見せてくれる。
ぶくぶくと泡立つ熱々のカラメルソースを大きく平たい長方形のバットに流し込み、様々な方向に何度も傾けることで丁寧に泡を消して、表面がスムーズになるようにならしていくのだ。しばらくするとカチカチに硬い飴のような、薄いカラメルの層ができた。
この上に卵などを混ぜたフランの具材を流し込み、オーブンに入れて45分ほど焼くのだという。オーブンから取り出したら冷蔵庫に入れて冷まし、翌日、ひっくり返して型から出せば出来上がり。
「型に入っているときはケーキみたいに見えるけど、ひっくり返すと、きれいな飴色の層が現れて魔法のようなの」とリズさん。こうして作った大きなフランを切り分けて食べるのが、プエルトリコ流だ。
フランの飴色の層には、ほんのり苦味のあるカラメルソースが染み込んでいる。食感は、かなりしっかりしていて濃厚な味わい。日本のプリンとは全く別の美味しさだ。「主人はこれが大好きで、2切れぐらいペロッと食べてしまうんですよ」とリズさん。
クリスマスの食卓などにも必ず並ぶというフランは、街のレストランでも定番デザート。でも、リズさんは、「私のおばさんが作ってくれたフランがこれまで食べた中で一番!」と、秘伝のレシピを守っているのだそう。ちなみに、プエルトリコでは、ココナッツやカボチャからグアバ入りのものまで、様々なスタイルのフランを見つけることができるという。
一方、デザートではないが、お店のメニューで気になったのが調理用バナナであるプランテーンを使った料理。プランテーンは主に熟す前の緑色の状態で使うものと思っていたら、メニューには熟したプランテーンを使う料理も並んでいる。リズさんに聞くと「料理には実が硬い熟す前のもの、少し柔らかくなった熟したもの両方を使うのよ。熟したものは、卵と一緒に朝食時によく食べるの」と言って、これをシンプルに焼いたものを出してくれた。
熟す前のプランテーンは芋のような味わいだが、熟したものは酸味がしっかりしていてリンゴのような風味。バナナと卵なんて組み合わせは考えられなかったけれど、これは美味しそうだ。
Ramichan CAFE
東京都港区西麻布1-15-10 パークビュー西麻布
電話:03-6434-9726
Webサイト:http://www.ramichancafe.com/
[Webナショジオ2013年3月29日掲載]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。