扁桃体の興奮を抑える前頭前野の働き

「ええ。扁桃体の興奮を抑えるのは、前頭前野(ぜんとうぜんや)の働きです」

前頭前野は、脳の前方に広がる領域で、理性や論理的思考を行う場所。ここが扁桃体にブレーキをかける。ヘビの例でいうと、動物園でヘビを見た場合は、山の中で遭遇したときほど恐怖を感じないだろう。これは前頭前野が「動物園だから安全」と状況判断して、自動的に扁桃体を抑えているためだ。

「自動的に抑えるしくみと、意図的に抑えるしくみ、人間はどちらも持っています。でも意図的に感情を抑えても、なかなかうまくいかないですね」

確かに。特に、怒りや悲しみのようなネガティブな感情は、無理に抑えられるものでもない。とすると、頼りになるのは自動制御の方か。「瞑想は、この自動制御能のトレーニングなのですよ」

へー、そうなのか。逆に、自動制御能を下げてしまう要因の代表例は、ストレス。頭が疲労困憊すると、感情も暴走しがちなのです。

注意しましょう。

(左)ストレス解消法として根強い人気がある、座禅などの瞑想。脳科学的にいうと、前頭前野の働きを高める作用があるという。前頭前野が元気になれば、扁桃体が抑えられて無駄に興奮しなくなり、心が鎮まっていく。 (右)ストレスフルな状況で疲労困憊したときは、気分もキレやすくなる。それもそのはず、ストレスは前頭前野の機能をダウンさせてしまうのだ。扁桃体の興奮に歯止めがかからなくなって、イライラや不満が募りやすい
北村昌陽(きたむら・まさひ)
 生命科学ジャーナリスト。医療専門誌や健康情報誌の編集部に計17年在籍したのち独立。主に生命科学と医療・健康に関わる分野で取材・執筆活動を続けている。著書『カラダの声をきく健康学』(岩波書店)。

[日経ヘルス2013年3月号の記事を基に再構成]

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