男性がまず変化を グラットン教授が語る女性の未来「ワーク・シフト」著者

2014/7/13
基調講演するロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授(6月17日夜、東京都渋谷区)

「すべての日本企業とは言わないが、まだ古い働き方に固執しているところがある。そうした働き方は今は欧米諸国では見られない。そうした状況であるが故に今回、近く日本でも出版される『未来企業』という本を書いた。本の中には20の企業の例があり、どういった働き方があるかを示している。世界各国の状況を見ることが重要で、ほかの会社がこんなことをやっている、こんなパターンもあるということを知れば、日本の企業ももっと自信を持ってワーク・シフトできるだろう」

――グラットン教授たちの調査で、ヨーロッパの企業幹部で、男性幹部のほぼ100%が子どもがいたのに対し、子どもがいる女性幹部は60%に満たなかったという結果があった。女性はまだ少数派で、組織の中で意味のある仕事をしようとすれば男性よりも多く働くことにつながらないか。

「より女性にとって難しいということは言える。男女を比べると女性の方がより多く家事をやっている。家事も労働時間に合算すれば長い間働いているのは女性だ。日本の今の長時間労働では、日本の企業で働いて子どもを産むということは女性にとってほとんど不可能な状態になっている。しかし、長時間働いたから生産性があがったというような調査結果は全くない。長い時間働けばいいというような思考から抜け出す必要がある。そうすれば、男性も女性も家に早く帰れて、子どもと過ごすことができる。そうした動きは今まさに企業にも起こりつつある」

教授からのメッセージ
大学生やもっと若い女性たちへ
目をしっかり開いて情報を捕まえることをアドバイスします。テクノロジーやグローバル化など仕事に関わるトレンドの変化に敏感でいて、自分や就きたい仕事にどう影響するか気をつけていてください。今後の選択のために良く考えてみてほしいです。
社会に出たばかりの女性へ
先輩にどうやって今の地位にたどり着いたか質問してみてください。キャリアの針路を見つけ、数々の難しい選択をする際に力になってくれるメンターを見つけることを強く勧めます。社内でも社外でもいいですが、男性の方がより役立つかもしれません。
働くお母さんたちへ
集中して一生懸命努力するのが大きなカギですが、私は自分が世界一の母親ではなく「及第点の母」で良いとわかったことが大きかった。子どもは大人が思うよりしなやかで強い。「スーパーウーマン」の理想を捨て「及第点」でいいと考えるべきです。
リーダー世代の女性たちへ
今日のリーダーには、世界的な課題に視野を広げ自社がどう関われるかを考える外的な探求と、自分自身をよく知り困難な状況にどう対応するかを知るために行動する内的な探求が求められます。それが部下の信頼と支えを得るのにつながるはずです。
男性ができること
パートナーのためには家での役割をしっかり果たすことです。家庭での平等が職場での平等につながるでしょう。職場では女性が能力を発揮するのを妨げているかもしれない社内の偏見や障害の存在をもっと意識し取り除くよう努力することです。

――女性自身ができることは?

「まず自分の職種を選ぶ、キャリアパスを選ぶということだ。例えば、トップに立とうというキャリアパスもあれば、そうでないのもある。自分がどっちのキャリアパスを歩みたいかを考える。そして2つめに、そのキャリアパスに合ったメンター、つまり自分に色々な助言をしてくれる先輩を的確に見つけることが大変重要だ」

「メンターは必ずしも女性でなくても男性でも構わない。自分よりもはるかに年上の人をメンターにすることが重要なので、今の社会構造を考えると、どうしても男性になってしまうのではないか。英国では、能力のある若い女性を抜てきし、他の会社の役員がメンターになるというプログラムが非常に成功している。民間主導で、全国で20社くらいが参加している」

――4つめの男性ができることは?

「男性はもっと家事ができるはず。男性ができる最も重要な役割だ。欧米の若い世代では男性が働く女性と結婚することが多く、昨今はとてもバランスがとれた形で父親も母親も育児に関わるようになっている」

――日本の男性は、欧米の男性の3分の1くらいしか家事・育児をしないという調査結果がある。女性がするように仕向けないといけないのか。

「そうだ。言うまでもなく」

――グラットン教授は2人の息子を持ち、1人めの時はビジネススクールで初めて妊娠した教授だったということだが、経験を踏まえ、子育てしながらキャリアを積むことに対するアドバイスを。

「0歳から5歳までが一番大変なので、最初のアドバイスはだんだん楽になるから、ということだ。2つめのアドバイスは、1日も早く復職することだ。というのも、2年ブランクがあると、もう復職しないという調査結果がある。3つめのアドバイスは、働く母親を応援してくれる会社を探すことだ。私は以前、コンサルティング会社で働いていたが、研究職に転職したのは、どうしても仕事に時間をとられて子育てが無理だと思ったからだ。これは会社にとっては損失だったと思う。私は最も若いパートナーだったので。母親をサポートする体制をとらなければ、日本の企業も同じような轍(てつ)を踏むことになってしまうかもしれない」

(聞き手は女性面編集長 橋本圭子、木寺もも子)

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