「正義感に忠実に生きたい」 村崎直子さん
米調査会社クロールの日本支社代表
警察庁のキャリア官僚だった経験を生かし不正調査など企業のリスク管理を手助けする。米国の調査会社クロールの日本支社代表だ。クロールはかつてフセイン元イラク大統領らの隠し財産を世界中で追跡調査した業界の名門だ。
「悪いことは悪いと言える人間でいたい。正義感に忠実に生きたい」。そんな思いから1995年に警察庁に入った。原点は中学時代だ。通った地元の中学校は校内暴力で荒れていた。不良たちに何も言えない自分に無力感を覚えたという。
典型的な男社会の警察組織にあって異動する先々で「初の女性」という説明がついて回った。2003年に赴任した静岡県警で汚職や知能犯を追う捜査2課長を務めた。同県警で捜査部門の課長に女性が就くのは初めてだった。05年には兵庫県警に移り国際テロやスパイなどを取り締まる外事課長に就任した。同県警で初の女性課長だった。
「仕事で女性であることを、意識したことはない。『背が高い、低い』というのと同じで個性の1つにすぎない」と本人はこだわらない。170センチを超す長身で物おじしない性格だ。新しい職場に行っても酒を酌み交わしてすぐに溶け込んできた。当時の仲間とは今でも交流が続く。
米ハーバード大学に1999年から2年間、留学し公共政策を学んだ国際派でもある。2001年8月からは外務省に出向し、北朝鮮による拉致被害者家族の対応も担当した。02年の日朝首脳会談の後、拉致問題の実地調査団の一員として平壌に飛んだ経験もある。
入庁13年目に体調を崩したのが転機となる。仕事を休んでいる間に自分を見つめ直し、何か違う形で人の助けになりたいと思い立つ。警察を08年に去り米系コンサルティング会社を経て、10年に今の会社に移った。
日本企業のグローバル化に伴い、海外で買収を予定している会社の資産内容の調査依頼などが増えている。ただ、欧米に比べ日本企業はまだインテリジェンス(情報)の戦略的な活用が遅れていると思う。「情報収集の面で企業を助け日本経済の発展に貢献したい」。あくまでも前向きだ。
(編集委員 三反園 哲治)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。