冬の注目映画、米アカデミー賞を盛り上げる期待作も
日経エンタテインメント!
2015年2月22日(日本時間23日)に発表される米アカデミー賞を目指して、2014年11月からノミネート常連監督作や人気俳優出演作が相次いで公開された。例年、正月映画は娯楽作が多い一方、アカデミー賞を狙う秀作も数多い。この冬公開の作品の中では『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクが主演女優賞に、『ジャッジ 裁かれる判事』のロバート・デュバルが助演男優賞にノミネートされたほか、『インターステラー』が視覚効果賞や美術賞をはじめ5部門にノミネートされている。それらを含め、冬の注目作5本をピックアップした。
まずは『ゴーン・ガール』。米映画評集計サイト「Rotten Tomatoes」で88%の高評価を獲得した、デヴィッド・フィンチャー監督のサスペンスだ。結婚5周年の記念日に突然姿を消した妻。部屋は荒らされ、キッチンには争った跡が残る。警察が捜査を進めるなか、夫にも疑惑の目が向けられる。やがてメディアを巻き込んで事件は巨大化していく。
「夫が妻を殺したのか」というミステリーが展開しながら、次第に夫婦の裏の顔が明らかになる秀逸な人間ドラマに仕上がっている。今回は惜しくもノミネートを逃したが、フィンチャー監督はこれまで『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』『ソーシャル・ネットワーク』で監督賞にノミネートされている。
『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』も「Rotten Tomatoes」で74%の高評価を得るSFドラマだ。農業危機で人類が破滅の危機にひんする近未来、居住可能な新たな惑星を探す人類だったが、太陽系にその惑星はなかった。だが、土星近くで「ワームホール」――別の銀河へとつながるトンネル――を発見する。命を危険にさらすミッションに挑む男性と、地球に残した娘の愛情を軸に、壮大な宇宙旅行を描く。
主演は2014年に『ダラスバイヤーズ・クラブ』でオスカー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー、共演は『レ・ミゼラブル』で助演女優賞受賞のアン・ハサウェイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』で主演女優賞候補となったジェシカ・チャステインと、演技派がそろっている。
モーゼの英雄譚を3Dで
2014年12月12日の全米公開に先立ち、前評判が高かったのがリドリー・スコット監督の『エクソダス:神と王』だ。旧約聖書の「出エジプト記」に記されたモーゼの英雄譚を3D映像でスケール感あふれるスペクタクル大作に仕上げている。巨大王国エジプトで王家の養子として育てられたモーゼ。やがてヘブライ人である出生の秘密を知り、エジプト人に虐げられているヘブライ人を救うため、兄弟同然に育ったエジプト王ラムセスに反旗を翻す。
ブラッド・ピット主演作『フューリー』は、自ら製作総指揮も務めたこん身の作品。第2次大戦末期、「フューリー」(激しい怒り)と名づけた戦車でドイツ軍に立ち向かった米軍兵士5人の1日の出来事を描く。チームリーダーにふんしたピットの熱演が見もの。ブラッド自身は、2013年にプロデューサーとして『それでも夜は明ける』で作品賞を受賞している。
『ジャッジ 裁かれる判事』は、『アイアンマン』のロバート・ダウニーJr.主演作。ロバート・デュバルふんする裁判官の父に殺人容疑がかけられる。絶縁状態だった弁護士の息子は、父と衝突しながらも、無実を信じ弁護にあたる。アカデミー賞狙いの秀作が集まるトロント国際映画祭では、オープニングを飾った。冒頭で述べたように、ロバート・デュバルは今回、助演男優賞の有力候補として注目を集めている。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2015年1月号の記事を基に再構成]
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