お正月から家族みんなで笑って過ごそう
立川談笑
●新婚さんに質問
「おめでとう! 結婚したんだって?」
「えへへ。ありがとう」
「ねえ。朝は、どっちが先に目を覚ますの?」
「彼。いつもあたしを起こしてくれるんだ」
「いいなあ。どんなこと言って起こしてくれるの?」
「『おい』って。『おい! 起きろよ、めぐみ!』って」
「毎朝?」
「毎朝!」
「何て答えるの?」
「『めぐみじゃなくて、恭子だよ』って」
「……」
●リトルリーグの試合中
「タイム、タイム! 全員集まれ」
「はい」
ユニホーム姿の子供たちが監督の下に集まった。
「おいみんな、『チームプレー』って分かるか? みなが一つになって勝利を目指すんだ」
「はい」
「じゃあ、ファーストベースの微妙な『アウト、セーフ』だとか、一球投げるごとの球審の『ボール、ストライク』にいちいち大声で抗議するのは良くないのも、分かるな?」
「はい」
「よし。じゃあ、応援席のお母さんたちを黙らせてくれ」
●パパに叱られる
早朝の高級住宅街に衝突音が響いた。ガレージ内で車をぶつけたのだ。ジャガーの運転席から頭をかかえて降りてきたのは、20歳にもならない若者。
「ああ! やっちゃった! なんでバックするかな? ありえねえ! 最悪! パパが何て言うと思ってんだよ!」
騒いでいるお隣りの、これまた瀟洒(しょうしゃ)な邸宅のテラスで朝食を取っていた紳士が声をかけた。
「おーいヒロくん! どうした?」
「すいません。この通り、自分ちのガレージで事故っちゃったんです。ギアを間違えてバックしちゃった。よりによってパパ一番のお気に入りのジャガー。最悪っすよ! もう、パパが何て言うかと思って……」
「やったことはやったこと。元には戻らないさ。それよりコーヒーでも飲んで落ち着きなさいよ」
「でも、迅速かつ適切な対処を施さないと! 『失敗とは、ちょっとした失敗をさらに深刻化させることだ』。絶対パパが怒りますから……」
「パパはいい! パパの話はいいから、とにかく上がって一服しなさい!」
「お邪魔します。でも、あんな事故をやらかした直後に、のんきにコーヒーをご馳走になってるなんて、パパがどう思うか」
「いいかい。君のパパは立派だ。事業で大成功して社会貢献もしてる、家庭でも立派にふるまってるだろう。でも、子育てとしてはいかがなものかな。これは相互依存っていうんだ。君がパパを頼っているように、パパも君に頼ってる。頼らせている。今後はお互いに自立すべきだな」
「というと?」
「自分のことは誰にも頼らず自分自身で解決するんだ」
「でもパパは!」
「…パパは、パパ。君は、君だよ」
「ありがとうございます。少し落ち着きました」
「そうか。ところで今日パパはどちらにいるんだい?」
「ジャガーと壁の間にはさまってます」
●親の職業
「君んちのパパってマジシャンなんだって?」
「うん。こないだも新しいマジックに挑戦してたよ」
「へー、どんなヤツ?」
「身体をチェーンでグルグル巻きにして海に飛び込むんだ」
「すごいじゃん。それでどうなった?」
「今はママが代わりにマジシャンやってる」
●走行中の携帯電話
「もしもし、おじいちゃん? 運転中だよね。ごめんね」
「おう、麻衣子か。急用か?」
「あのさ、今テレビのニュース見て慌てて電話したんだけど。今走ってるの、東名高速だよね。下り線。やっぱりそうだ! 今ね、東名高速を逆方向に暴走してる危ない車が走ってるんだって。ねえ、そこだよ! 気をつけてね、おじいちゃん!」
「わっはっは! なーに言ってんだ。じいちゃんは運転上手だから、逆走車だってパッと気付いてサッと避けちゃうんだ。あっはっは。ぶつかりゃせんよ」
「でもさ、いざとなったら分かんないじゃん」
「避けられるって! それについさっき、その逆走車に行き遭ったよ。こっちに向かって走ってくるから『危ねえ!』ってとっさに避けたところだ」
「うっそ~!」
「なぁに考えてんだか。運転してたのは若そうな男だったけど。えらいスピード出してた。高速で逆走なんて、とんでもねえ」
「良かったあ、無事で。もう、本当に心配したんだから。じゃ、大丈夫だね」
「わーっはっはっは! おまえのおじいちゃんは、まだまだ耄碌(もうろく)しとりゃせんよ。ほうらまた逆走車! また逆走車! こいつも逆走車!」
「…おじいちゃん? おじいちゃん!」
さあ、2015年のスタートです。今年も豪快に笑って、しっかり頑張りましょうね!
(次回は1月14日(水)の更新予定)
<今後の予定>都内での独演会は1月5日、2月8日、3月14日、4月21日、吉笑(二つ目)、笑二(同)、笑笑(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は1月16日、2月20日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/
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