標準アプリでここまで撮れる iPhoneでお手軽動画
~(上)撮影の巻~
「えっ」と驚くような光景や、「誰かに伝えたい」と思うようなものに出合ったとき、それを写真で残すか、動画で残すか――。最近、迷う場面が多い。被写体に動きがあったり音が出ていたりすれば、とりあえずiPhoneで動画を撮るよう心がけている。実際にやってみると基本操作は意外と簡単だ。
標準のカメラアプリを立ち上げてモードを「ビデオ」に切り替えると、シャッターボタンが赤色に変わる。これを押せば動画撮影が始まり、もう一度押すと撮影が終了する。発光ダイオード(LED)ライトや自撮りカメラ、ピント合わせ、ズームなどの使い方は、写真を撮るときと同じ要領で大丈夫そうだ。隣に白いボタンが現れるが、これは動画撮影中に写真を撮るためのボタンだ。
注意が必要だと感じたのは、iPhoneを構える向き。縦で撮ると、パソコンやテレビ画面で見にくくなってしまう。特別な意図がないなら、動画撮影ではiPhoneを横に構えた方がいいだろう。その際、ホームボタンが右にくる構え方が正解だ。逆にして撮ると、パソコンによっては映像が上下さかさまに表示されてしまうからだ。
基本操作を押さえたので、いざ撮影に。訪れたのは、2027年開業を目指してリニア車両が走行試験している山梨県都留市の県立リニア見学センター。毎週金曜日の夕方に次週の走行試験の日程、当日にその時間帯がわかるので、事前に確認したほうがいいだろう。
同センターではリニア車両をかなり近い距離から屋内で撮影できる上、走行音が聞ける屋外スペースもある。時速およそ500キロで走る車両を間近で写真に収めるのは報道カメラマンとはいえなかなか大変だが、動画なら高度な技術を使わなくても比較的簡単に動きをとらえることができそうだ。
iPhone5s標準搭載のカメラアプリはスローモーション(スロモ)も簡単に撮れる。ビデオモードから右にフリック(画面上で指を素早く動かして行う操作)すれば「スローモーション」に切り替わる。撮影した動画は実際の1/4の速度で見ることができる。iPhone5s以前の世代でも「SloPro」などのアプリを使えば同様にスロモ撮影ができるという。
例 | 被写体 | 効果 |
---|---|---|
動きの速いもの | 車、スポーツ | 観察眼 |
科学現象 | 水滴の動き、鳥の羽ばたき | 観察眼 |
生き物の表情 | くしゃみ、泣き顔 | 観察眼 |
危なっかしいもの | 曲芸、プールの飛び込み | 緊迫感 |
ローアングル | 草むらの昆虫や遊ぶ子ども | 特撮風 |
いろいろなものを撮っていくうちに、どんなものがスロモ撮影に向いているか、だんだんわかってきた。当たり前だが、スロモが効果的なのは「肉眼では一瞬しかとらえられないもの」。写真にはない発見や感動を与えてくれるものもたくさんあるはずなので、皆さんも探してみてほしい。
先月盛り上がったサッカーワールドカップブラジル大会。プロたちの華麗なボールさばきに、明日の代表選手を夢見るサッカー少年も多いだろう。そこでこんなことを考えてみた。「スロモ機能」を使ってリフティングのコツを学べないか――。サッカーと音楽を融合したリフティング・パフォーマンス集団「球舞」に協力してもらい、試してみることにした。
リフティングのコツは「ひざの下の力を抜き、上体がゆれないようにすることです」とリーダーのマルコさん(36)。そこで初心者にありがちな、上体が安定せず力が入っている例と、それが解消された2つの動画をスロモ機能で撮影した。
ボールのような高速で動く映像をスロモにすると、違いが一目瞭然だ。iPhone5sを使っているパフォーマーのYoshioさん(21)は自分の演技をスロモ撮影して確認することもあるという。
夏休みシーズンということもあり、自由研究をイメージして科学現象のスロモ撮影にも挑戦してみた。東京都千代田区にある「科学技術館」では毎日、数多く科学の実験ショーを開催している。液体窒素でボールを凍らせるような自宅ではできない実験から、保護者のもとで手軽に試せる金だわしの燃焼実験まで、分野は幅広い。
実験スタッフによると、最近は実験ショーを携帯ゲーム機やスマホで動画撮影する子どもが増えているらしい。写真と動画のどちらで撮るのが適しているか、今どきの子どもたちは感覚的に分かっているのかもしれない。
写真やビデオをみるアプリを開くと、スロモ動画のサムネイルには破線の丸マークがついている。これを再生すると動画の始まりと終わりが普通の速さになっていて、途中でスロモに切り替わる。青い破線がスロモとそうでない部分を示していて、破線の間隔が広い部分がスロモにあたる。この始点と終点をずらして好きな箇所を指定できる。微調整しながら効果的に見せられる部分を見つけよう。
今回の連載にあたり、我々はカメラマン人生で初めて「仕事として」動画撮影に挑戦した。猛スピードで通過するリニア車両に合わせてiPhoneをすばやくふったり、プールの水中から現れる子どもたちとの距離を想像して撮影したり……。数秒後の未来予想が必要なのは写真も同じだが、報道写真は「1枚撮影できればOK」の世界。それに比べて、動画は被写体が画面から見切れると使い物にならないことが多く、苦労した。「一瞬の表現」の写真と「連続した表現」の映像。両者の違いを攻略するのは、案外時間がかかりそうだと感じた。
次回は撮った動画を編集するテクニックを探ってみたい。
(写真部 小林健・寺沢将幸)
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【iPhoneで撮影したいろいろな動画の例】
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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