iPhone2台で料理写真を魅力的に 1台は照明役
報道カメラマンのiPhone撮影塾
光を意識するだけで、iPhoneでも十分に目を引く写真が撮れる。そもそも写真は光と影の表現とも言われ、光をとらえて形にする意味で一眼レフとiPhone内蔵カメラに違いはない。取材の内容にもよるが、私たち報道カメラマンも日ごろから自然光でも人工光でも、光源を気にしながら一回一回シャッターを切っている。現場の光をいかにして自分の味方につけるかが、きれいな写真を撮るためのカギを握っている。
食べ物は「半逆光」で
カメラマンの仕事の一つに、人気の商品をそのイメージも含めて写し取る、いわゆる「ブツドリ(物撮り)」というものがある。雑誌やパンフレットを美しく飾る広告写真のカメラマンと違い、照明機材を多く持たない私たち報道カメラマンは、現場にあるものや、現場にある光をなるべく生かして、手軽に素早くブツドリを実現している。これをiPhoneでの撮影に応用してみると……。
さっそく、昼ごはんを撮ってみることにした。フェイスブックにアップする食べ物の写真も、ちょっとした撮影の工夫でおいしそうに写すことができる。最近は、「自然光によるフード写真」が写真業界でも人気を集めている。
撮影方法は簡単。窓際に撮りたい料理を置き、窓に向かってiPhoneを構える。窓から差す光が「半逆光」(光源が被写体の後方斜め上にある状態)になるようにして撮る。それだけでOK。
皿の全部を写さなくても、見せたいところを中心に構図を切り取ればより魅力的な写真になる。試しに、幸い窓が多い日経新聞東京本社の社員食堂で、同僚の視線を気にしつつも撮影してみた。
屋内の明かりで撮った写真と窓際に置いて撮った写真の違いは見ての通り。「半逆光」で撮った写真は陰影が強くなり、より立体感が出ている。また椀(わん)ものは光を受けて汁に透明感が加わった。
ちなみに日経電子版の人気企画「今週の3つ星スイーツ」で使っている写真の多くも、半逆光で撮ったものだ。
料理だけではどこか寂しくイメージが伝わりにくいときは、グラスを脇に添えたりするといい。主役の料理を引き立てるいわば「刺身のつま」だ。ほかにランチョンマットや箸置きなどもあると、よりまとまった写真になるはずだ。
内蔵フラッシュは避けよう
「料理の写真を奇麗に撮りたいのに、レストランが暗くて……」と困ってしまう場合があるかもしれない。でも、そんなときでもiPhone内蔵のフラッシュは原則として使わない方がいい。
不自然な影ができたり、順光で立体感が失われたりしてしまうからだ。特にiPhone5のカメラはISO3200の高感度撮影もできるため、フラッシュの光に頼る必要もさほどないだろう。
ただ「半逆光」の状態を作り出すのにはちょっとした工夫が必要だ。ここはひとつ、同席している相手に手伝ってもらおう。相手のスマートフォン(スマホ)のライトで、向かい側から料理を照らしてもらうのだ。相手を撮影アシスタントに見立てて、ちょっとしたプロカメラマン気分を味わってみては。
明るさ固定する「AEロック」を併用
逆光や半逆光で撮影すると、まぶしいとカメラが判断して、全体を暗く抑えてしまう。そこでおすすめしたいのが露出(明るさ)を固定する「AE(自動露出)ロック」の技だ。
普段、ピント合わせに使っているiPhoneの画面タップの機能には、そのピント位置の明るさに全体を合わせる機能もついている。構図を決めた後に、明るさの基準にしたいところ、つまり画面内で暗く表示されているところを軽くタップする。すると画面全体が明るくなる。いろいろな場所をタップし、自分のイメージに近い明るさを見つけたところでシャッターを切ればいい。
また、画面を長押しすると「AE/AFロック」の表示が出る。画面を動かしてもその明るさを保持できるから、細かく構図を変えたい場合には重宝する。ただピント位置の固定も連動(AFロック)してしまうので注意が必要。2つの機能を別々に操作したい場合には「ProCam」(有料)などのアプリを使うといい。
「現場で苦労しといた方がいいぞ」としばしばデスクに言われる。撮影した写真が実際より暗くなりすぎてしまい、見やすいように明るさを事後的に微調整しなければならなくなったりしないよう、現場での撮影そのものを頑張った方が楽だからだ。光を味方につけるために私たち報道カメラマンは現場での努力を惜しまない。みなさんも日ごろから光を意識してみてはいかがだろう。
(写真部 小林健・寺沢将幸)
iPhoneで撮影した料理写真の例
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