安藤先生 なぜなら日本のインターンは、多くの場合は会社の雰囲気と相性を知ることが目的だからです。企業の視点からは、他社でインターン経験があっても、自社との相性についてはよくわかりません。有利に働く可能性があるとしたら、採用されるのが難しいとされる企業のインターン経験がある場合に、その学生は能力が高いと予想されることから、面接に呼ばれる確率が高くなるといった効果でしょうか。
蒼太 でもインターン先でやる研修や仕事内容から学ぶこともあると思うのですが。
安藤先生 日本企業のインターンで、業務に直結するスキルが身に付くというケースは多くはありません。残念ですがそれは期待しない方が良いでしょう。
これが経験者採用が当然の国において行われるような、仕事を学ぶためのものであれば、「この仕事ができます」と言える状態になるので、他社でも効果を持ちます。しかしそれはインターンとしてフルタイムで1年くらいは働いた上での話です。
蒼太 そんなに長いインターンをやった人はいないと思います。少なくとも僕の周りではいませんね……。
安藤先生 繰り返しになりますが、インターンをすることに目的があるなら、やったほうがいいでしょう。さらに言うと、その目的や体験したことを自分なりに本番の採用試験で効果的に伝えることができるならばいいですね。
例えば、就職活動においてインターンの経験を効果的に伝えられるというのは、以下のような場合です。
・早い時期からキャリアを考えて活動していたという積極性や行動力を伝えられる
・実際にその企業の仕事内容を理解し、また働く社員の雰囲気や社風を感じたうえで、その企業を志望していることを伝えられる
蒼太 それでは、先生が言っていたインターンの注意点とは何ですか?
インターンの注意点
安藤先生 まず学生の皆さんに考えていただきたいのは、「あなたは十分な準備ができていますか?」という点です。例えば志望企業に運よくインターンとして採用されたとして、そこで十分な結果を出せなかった場合はどうでしょうか。
蒼太 採用担当者に「この学生は能力が低いな」とか「うちの会社には合わないな」などと思われてしまいそうです。
安藤先生 そうですよね。インターンを通じて会社のことを知ることができ、またその会社に入りたいという希望が強くなったとしても、インターンで評価されないと、反対に採用確率を下げることにもなるのです。
また、インターンに参加する際には、その機会費用についても注意する必要があります。ミクロ経済学の授業で「機会費用」は勉強しましたよね?
蒼太 はい。えーと、何かを選択したときに失うもののすべてを合計したのが機会費用です。それは実際に財布から出て行く金銭という費用だけではなく、得られなかったものなども考える必要がある、と授業で聞きました。
安藤先生 その通りです。インターンに置き換えて話すと、その間は他のことができないということを理解する必要があります。