日経エンタテインメント!

(写真:橋本勝美)

「10年後、20年後にどんな人生が待っているのか、不安があるなかで、絶望せずに前を向いて、ちゃんと人生と向き合う大切さを感じ、自分もこういう年齢の重ね方をしたいと思いました。そんないい話をしてくれた後に、『じゃあさっそく若い芽、摘んでおくか』って、急にSっ気を出すお茶目なところもあって(笑)。素敵な方でしたね。

『妖怪大戦争』は特殊メイクがすごくて、写真を見たら分かりますが、もう『誰これ?』という感じではあるんですけど(笑)。三池崇史監督と、主演の寺田心君をはじめ、周りのキャストの方たちの中で作り上げていった天邪鬼というキャラクターです。アイデアをバンバン出し合う活気ある現場でしたし、楽しみにしてほしいです」

代表作が生まれ、今後、オファーが増加することは間違いないだろう。どんな作品をやりたいと思っているのか。もしくは、選択するにあたり判断基準はあるのか。

「判断基準……。そこもそうですが、役者って自分と向き合い続けることになるので、自分がどう生きたいか、どうしたいかの気持ちも大事にしたいと思っています。20代のうちは、なるべくいろんなものに触れたくて。ぶっちゃけて言うと、ジャンルは何でもいいです。僕に合う、合わないっていうことで決めたくないですし、あらゆることにチャレンジして、もがいていきたい。

そういう意味では、『チェリまほ』は挑戦にはなりました。なかなかない役なので。とは言いつつ、僕自身の中に安達みたいな要素は存在していて。だから全く理解できないわけではなく、不安がありながらも、共感できるものがたくさんありました。

最初から役者の道に興味があったわけではなかったんですが、作品を見た方に『明日から頑張れそうです』とか、『元気をもらいました』とか言っていただけるたびに、希望を与えられる仕事なんだってうれしくなります。これからも恐れずに、いろんな役を経験したいですね。その積み重ねで、自分のブレない軸だったり、役者としての個を深めていけたら、30代くらいからは『この役を生きたい』っていうのを自分の意思で選択していきたいと思っています」

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]