現在、最も注目度の高い若手俳優の1人が赤楚衛二だろう。俳優デビューから6年がたち、現在27歳。2017年に若手の登竜門である『仮面ライダー』シリーズに1年間出演して以降、『イノセンス 冤罪弁護士』(19年)など連ドラのレギュラー出演が増加した。同年12月には、『ねぇ先生、知らないの?』で馬場ふみかとW主演し、20年に公開の映画『思い、思われ、ふり、ふられ』で浜辺美波、北村匠海、福本莉子と4人主演するなど、恋愛・青春系作品のセンターに立つように。

めきめきと頭角を現すなかで抜てきされたのが、テレビ東京で20年10月期に放送された『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』)だ。童貞のまま30歳を迎えたことで、「触れた人の心が読める魔法」を手に入れた主人公が、イケてる同性の同期から好意を寄せられていることに気付いて戸惑うラブコメディ。赤楚は冴えない30歳のサラリーマン・安達清役で初の連続ドラマ「単独」主演を果たした。安達の相手となる、仕事ができて女性にモテる黒沢優一役は町田啓太。2人のピュアな心の動きと恋愛模様が丁寧に描かれ、放送を重ねるごとにファンが増加。評判は海外にまで及び、タイやベトナム、フィリピンなどでも人気を得ている。
主演連ドラがヒット作となり、俳優としてのステージが上がろうとしている。『チェリまほ』にはどう向き合ってきたのか。
物づくりの楽しさを味わった現場
「今振り返ると…そうですね。『チェリまほ』は本当に、宝物になりました。人との出会いも大きかったです。町田君をはじめとするキャストはもちろん、プロデューサーの本間(かなみ)さんや、風間(太樹)監督、スタッフのみなさんいい人ばかりで。撮影は約1カ月で短かったのに、しっかり信頼関係が築けて、『終わってしまって寂しいな、またやりたい』と思うほど。
僕、一目ぼれ派というか、人をだんだん好きになっていく過程っていうものがどういうことか、あまり分からなかったんですよ。撮影中はずっと悩んでて。でも、今まで自分が持っていなかった価値観が、『チェリまほ』を通して広がったので、それも素敵な経験になりました。
現場では、キャストもスタッフさんも、全員がどうやったらいい作品になるんだろうっていうのをずっと試行錯誤してましたね。ワイワイにぎやかなんだけど、物づくりの楽しさをいつも感じられた空気感は印象に残ってます。風間監督をはじめ、30歳前後の人が多くて、同世代の人たちと取り組めたことで、役者の僕も歯車として、作品により深く携わることができたような気がします。
風間監督とは、インする前の顔見せのタイミングで、ドラマで伝えたいことや作品の意義、あと安達はどんな人間か、みたいなことを話す機会があったので、ある程度キャラクターのベースを作ってから撮影に臨みました。現場ではアドバイスというよりは、基本、確認しながらという感じでしたね。楽屋まで来てくださって、町田君や後輩の六角役の草川(拓弥)君も含めて、『こういうシーンだから』みたいに話し合ったり、そういう共通認識を増やす作業が多かったです。
その上で、例えば『目線、今ちょっと下げたよね。そこはすぐに下げるんじゃなくて、ゆっくりのほうがいいよ』とか。共通認識を持った上でのディレクションなので、疑問を持つことなく、すんなり受け入れられました。周りにいる藤崎さん(佐藤玲)も、柘植(浅香航大)も、湊(ゆうたろう)も、先輩(鈴之助)も、みんな僕を安達として居させてくれて。そういうところの小さい積み重ねでも、安達は出来上がっていったかなと感じます、すごく」