――「年収を上げたい」と考えるビジネスパーソンも多いです。

「年収の高い企業ランキング」などの記事がしばしば関心を集めますが、上位企業は特定業界に偏っていますよね。年収は実力より、業種・職種の違いに大きく依存するからです。だからといって、年収だけを理由にして適性のない仕事に就くのは現実的ではない。もし転職できたとしても、長続きしないでしょう。大切なのはランキングではなく、自分自身が「重宝される人材」になることです。年収は、その結果としてついてくるものと考えたほうがいいのではないでしょうか。

――「掛け算キャリア」を築いていくための一つの手段として、転職を使うということですか。

その通りです。つまり、異業種・異職種転職の勧めですね。

業種と職種は一度に変えない

ただ注意してほしいのは、僕が初めに転職したときのような過ちを犯さないでほしいということ。業種と職種を一度に変えるのはリスクが大き過ぎます。業種を変えるなら、職種は動かさない。逆に職種を変えるなら、業種は動かさない。片足ずつ「ずらしていく意識」を持つといいと思います。

また、がむしゃらに転職すればいいというものでもありません。「誰にも求められない掛け算」をし続けても、「重宝される人材」にならないのは当然ですよね。まずは今いる職場で「私はこれをやった」と言える成果を着実に上げること。そして、そこから得た経験・スキルが「求められている場所」を見つけるため、社外へのアンテナも高く保っておくこと。これが、転職成功に必須の条件です。

負の循環に陥ったジョブホッパーも

――転職回数が多い人は一般に「ジョブホッパー」とも呼ばれ、人材市場ではネガティブに見られることもあります。

回数ばかりに注目して「定着しない」「こらえ性がない」などと断じるのは時代遅れな見方だと思います。しかし実際、「負の循環」に陥っているジョブホッパーもいます。そういう人の多くは、成果を上げる前に「この職場はここが駄目だ」と、自分の外に理由を見つけては後ろ向きな気持ちで転職をくり返してしまっている。「自分らしく貢献できる場所はどこなのか」という視点がないのです。転職回数が多いのに、職務経歴からも特段の実績が見えてこないとなると、企業側も採用しづらくなっていくのは必至です。「掛け算」は、1に満たない数を掛け合わせると、数字がどんどん小さくなってしまいます。あくまで成果をしっかり積んでいくことが大事だということです。

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