特に大変だったのはチームプロジェクトだ。米国企業を一社選び、事業展開について分析した上で、弱点を克服するためのマーケティング施策を考えるという課題に5人で取り組んだが、時差があるのは高野さん一人だけ。授業前のチームの打ち合わせにも支障をきたし、歯がゆい思いをした。

テンプル大学のジャージーを着用。フィラデルフィア市役所前にて=高野さん提供

オンラインならではのコミュニケーションの壁も痛感した。米国人の学生が早口で話し始め、複数の会話がかぶると途端に聞き取りづらくなる。ましてやその会話に自分も入っていくのは至難の業。「対面授業の2~3倍は大変だった」と苦笑する。一方で、場の空気を共有できない分、自分の考えを即座に言葉にせざるを得なくなり、言語化能力が向上。「学びが濃くなった」実感があるという。

「対面だと、“You know”の一言で、なんとなく理解してもらえたことも、オンラインでは通用しない。しかも話すだけでなく、自分の考えをディスカッションボードに文章で書き込まないと評価してもらえないので、ごまかしが効かなくなるんです。そういう意味では鍛えられました」

高野さんの場合、秋以降は、夜中から朝までオンラインで授業を受けた後、日中は就活というハードスケジュールになった。留学生を対象にした就活イベント「ボストン・キャリアフォーラム」にオンラインで参加。個別企業との面接などもオンラインだったため、睡眠と食事以外はずっとパソコンにかじりついてる状態で、洗濯など身の回りのほとんどを、親に頼ることになった。「実家に帰っていたからこそ、それが可能だった。米国で一人暮らしのままだったら、まず無理だった」と振り返る。

「就活に影響しかない」

留学を切り上げ、日本の大学に復学した人もいる。都内の有名私立大商学部の4年生で、19年9月から8カ月の予定で中国の大学に留学していたAさんは、同国での感染拡大を受け昨年1月に帰国した。オンラインで留学を継続する選択肢はあったが、対面と同じだけの効果を得られるとは思えず、4月から日本の大学に戻ることに決めた。ところが蓋を開けてみると、復学した大学でも春学期はすべてオンライン授業に。「対面じゃないなら、中国の大学のオンライン授業で良かったのかも……」と複雑な表情だ。

「留学の中断で、思い描いていたものの半分くらいしか達成できなかった。それは本当に悔しい。授業はもちろん、卓球の部活で一軍メンバーに選ばれ、大会に向けて張り切っていたのに、それもなくなってしまった。就活への影響?いや、影響しかないです。留学経験者は有利だと聞いていたけど、深みを持つエピソードが語れない」

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それでも得られたものは大きかった
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