上司はなぜ決断力がない? 全体最適導くシステム思考第25回 システム思考

上の連中は決断力がない!

会社をこよなく愛する中堅社員のAさん。コロナ禍で落ち込んだ収益を大きく改善させようと、大胆な営業改革案を仲間と協力してつくりあげました。まずは上司である営業部長にぶつけてみたところ、「ぜひ、検討させてくれ」と好反応。ところが、その後何の音沙汰もありません。

部長ではらちがあかないと思ったAさん、意を決して社長に直談判することに。「こういう提案を待っていたんだよ」と褒められたのですが、やはり何か動いてくれた形跡はありません。

こういう話は組織ではよく起こります。箸にも棒にもかからないクズ提案ならともかく、なぜ中堅社員が一生懸命に考えた提案が採用されないのでしょうか。

すぐに思いつくのは、「上の連中は優柔不断で決断力がない」です。そうかもしれませんが、これだとどうしようもありません。Aさんに上司の性格や能力を変えることはできないからです。

私たちは、他人の失敗や不具合を相手の性格や能力といった、内面的なもののせいにしがちです(原因帰属バイアス)。そうではなく、相手が置かれた状況や環境など、外面的なもののせいにしたほうが生産的です。上の人たちは「決められない状況に置かれている」と考えるのです。

立場が変われば見える景色が違います。上になればなるほど、いろんなことを考慮しないといけません。自部門だけではなく他部門や会社全体のことも、会社だけではなくお客様や株主のことも。短期をしのぐだけはなく、長期的に会社の成長につながるかも大事なポイントです。

そういう意味では、一番決断しづらいのは経営トップです。社長が本当に求めているのは、全体最適を実現する構造改革のトータルデザインではないでしょうか。

悪循環こそが問題である

私たちは今、複雑で不確実な社会で生きています。ビジネスにしても、いろんな要素が複雑に絡み合い、互いに影響し合うひとつの大きなシステムをなしています。

そのため、今やろうとしたことが、いつ誰にどんな形で影響を与えるかが、見えづらくなっています。良かれと思ったやったことでも、予期せぬ副作用が生まれ、周り回って悪さをすることがあります。またそれが、別の問題の火種になることもあります。

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2種類のループで「見える化」する