赤崎先生と「没頭の時間」こそが宝 師弟でノーベル賞ノーベル物理学賞 天野浩さん(下)

名古屋大学エネルギー変換エレクトロニクス研究館の壁画「情熱を増幅させ伝える」の前に立つ天野浩教授(2020年11月)
地球温暖化、感染症のパンデミック(世界的な大流行)、エネルギー問題、再生医療、民間宇宙開発、そして人工知能(AI)……。人類の未来を左右する大きなテーマは、どれも科学の知見が欠かせないものばかりだ。そんな時代を生き、よりよい社会を築くにはどうしたらいいのか。科学の学びを生かし、それぞれの目標をめざす「サイエンスアスリート」から、そのヒントを学ぶ。

名古屋大学教授の天野浩(あまの・ひろし)さん(60)をノーベル物理学賞の受賞理由である青色発光ダイオード(LED)開発に導いた師は、共同受賞者のひとりである赤崎勇博士(91)だ。天野教授へのインタビュー後編は、快挙を生んだ師弟関係や、今後の理科教育のあり方などについて聞く。(前編は「自分で考え、やってみる ノーベル賞の土台は『経験』」

研究費に惑わされるな

――赤崎先生はご自身にとってどんな存在ですか。

「めちゃくちゃ大きな存在です。青色LEDをテーマとして示してくださいましたし、まだ博士号がない私を助手にして、研究を続けさせてくれたのも先生でした。赤崎先生がいなかったら、今の自分はないですね。(研究を続けられなかったら)不満だらけのサラリーマンになっていたかもしれません」

2014年にノーベル物理学賞を受賞した(左から)赤崎勇、天野浩、中村修二の各氏(共同)

――赤崎先生は「一度決めたテーマは変えてはいけない」と話していたそうですが、どう感じていましたか。

「これをやると決めたら、研究費には惑わされるな、そういうメッセージですね。赤崎先生は決して研究費に恵まれた方ではなかったんです。補助金が多くつきそうな研究テーマが出てくると、ぱっとそっちにテーマを移す人も割と多いのですが、先生は自分がこれだと思ったら、やり続けるんですよ」

――弟子によく助言する先生ですか。

「研究のことは、ほとんど何も言わないんです。でもずっと見てくださっていた。そして私たちが研究発表すると喜んでくれる、そういう感じでした。(青色LEDの材料となる)窒化ガリウム(GaN)のきれいな結晶をつくるまでには、すごく時間がかかったのですが、先生も同じ苦労をされてきたので、わかっていたんですね」

「それでも、先生が私に『君のつくる結晶はいつもすりガラスみたいだね』と言われたのは、よく覚えています。要は汚い結晶ということですが、どこかユーモラスな表現でした」

――将来のノーベル賞につながるGaNの良質な結晶ができたときは、褒められたのでは。

「一番最初に言われたのは『きちんと評価しなさい』でした。見た目がきれいなだけじゃダメだからと。大阪府立大学にあったX線回析装置で確かな結果が出ると、今度は『すぐに論文を書きなさい』でした」

学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
注目記事
次のページ
ビジネスのわかる工学の人間を
学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
Mirai アーカイブズ