麹町中の中3の生徒は約5割が「自分は国や社会を変えられる思う」と答えたと工藤校長は話す。

その際、最上位の目標に据えたのは機能性と経済性です。彼らはそもそも制服が必要なのかという実験を夏と冬の季節に分けて行いました。結果として夏の私服はTシャツや短パンなどで過ごせることから、非常に評判がよかったのですが、冬については重ね着も必要となるため、毎日着替えるとなると、私服は意外に経済的ではなく、評判も芳しくなかったのです。

この実験結果を受けて、すべての生徒たちにとって機能的で経済的であることを実現するためには、生徒それぞれが私服と制服を選べるようにすることを基本に据えた方がよいという結論を得たようです。この後、ようやく制服のデザインや素材への議論に移っていったわけですが、当然、デザインにこだわる人は少なくありません。

そこでデザイン決定の説明責任として重視したのが誰にも優しい機能性です。アレルギーのある生徒にも優しく、窮屈にならないようにツメ入りをやめようなどと誰にでもハッピーな機能性に関する意見を持ち寄り、現在の制服が決定されたのです。この4月からの新入生の入学にあたり、入学式さえ制服を着るのか、私服なのかは各生徒の意思に任されました。

生徒会組織の改正も制服のリニューアルも、生徒1人1人が当事者意識を持ち、みんなで議論し、実験したりして模索しました。そして全員がOKの形を探し、1つの結論に達したのです。特に制服リニューアルについては、誰もが自分たちが卒業後に実現することであることをわかった上で、今後入学してくる新たな後輩たちのために活動したことですから、本当に尊敬に値する素晴らしい取り組みだったと感じています。

麹町中学の生徒に関する興味深いデータをご紹介しましょう。日本財団が2019年にまとめた高校3年生を対象とした「18歳意識調査」では、「自分を大人だと思う」と答えた生徒はわずか29.1%、「自分が国や社会を変えられると思う」は18.3%にとどまりました。しかし、同じ調査を3年も若い麹町中学の3年生にしたところ、それぞれ30.2%、50.5%になりました。実際、彼らは学校というもっとも身近な社会のルールや仕組みを変えたわけです。今後、横浜創英の生徒たちもどのように学校を変えていくのか、その変化と成長を楽しみにしています。

工藤勇一(くどう・ゆういち)
1960年、山形県生まれ。東京理科大学理学部卒。1984年から山形県の公立中学校で教えた後、1989年から東京都の公立中学校で教鞭をとる。東京都教育委員会などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校の校長に就任。宿題や定期テスト、学級担任制などを次々廃止するなど独自の改革を推進。2020年4月から現職。

「校⾧ブログ」の記事一覧はこちら