大人や社会にあらがう子どもたちの表現欲

――これ持論ですけど、ギャルとかヤンキーだって、常に何かに疑問を呈する表現者だと思うの。大人や社会に対して不器用だけど一生懸命抗っている感じ。こどもたちは大人が思っている以上に、「これは何のためにやるんだろう」って、意義や目的をすごく大事にしているし、探していると思うんですよね。だから先生が「問い」だけ出してあげれば、子どもたちは勝手に想像して表現して、その枠をどんどん広げていける。そういうスキルを引き出してあげることが今まさに学校の授業にも求められていると思います。

「私も、先生はファシリテーターだということは、いつも心にとめていました。やはり先生と言うと、何か答えを持っている人、正解を与える人だと思いがちですよね。私の場合だと美術については生徒より深めている部分はあるので、その知識や考え方を使って、生徒の興味を触発するのが先生の役割だと考えています」

――中には、これをやって何になるのとまっすぐにきいてくる子もいると思うんだけど、そういう子に先生は何と答えますか?

「アーティストになろうとしているわけじゃなかったら、作品展のためにとか、先生に評価されるためにとかって、確かに無意味と言えますよね。でも、スケッチブックにいろいろ書き込んで自分で疑問を持って掘り下げていく時間って、先生のためにやっているわけじゃなくて、おそらく100%自分のために描いていますよね」

「人生100年と言われる時代の中で、与えられた課題をこなすとか、人のために何かするということじゃなくて、自分のために、ワクワクすることを探究していくというのって、ずっと必要だと思うんですね。学校だけじゃなくて大人になってからも。そんなことを子どもに伝えられればいいなと思います」

――学校の勉強で優劣つけられるのと違って、アート思考って、何も否定しないじゃないですか。だから自己肯定感が上がりそうだなって思いました。ワクワクすることを自分で見つけられる力を持ってほしいっていつも思っているんですけど、それがアート思考の根底にあるものですよね。

「アート思考法みたいに、方法論のような感じで捉える人もいるかと思うんですけど、手順のしっかりした方法論ではなくて、物事の見方が変わる、モードチェンジのようなものだと思っています。モードチェンジして世界と向き合ってみたとき、その10年後、20年後、いつか何か面白いことが起こるかもしれないという、もやっとしたものなんですよね」

「よく講演でも聞かれるのですが、この授業を受けてから生徒の行動が変わったとか、こういう成果が出たとか、進路に直接関係した、みたいなエピソードはあまりないんですよね。でもそれがアート思考らしいのかなとも思っていて。長い目で見て、大人になっても自分で探究することは面白いんだとか、自分の興味を大切にすることって楽しいんだと、そういう風に意識して学び続けることができればゴールなのかなと思います」

(文・構成 安田亜紀代)

末永幸歩さん
東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。東京学芸大学個人研究員として美術教育の研究に励む一方、中学・高校の美術教師として教壇に立ってきた。彫金家の曾祖父、七宝焼・彫金家の祖母、イラストレーターの父というアーティスト家系に育ち、幼少期からアートに親しむ。自らもアーティスト活動を行うとともに、内発的な興味・好奇心・疑問から創造的な活動を育む子ども向けのアートワークショップ「ひろば100」も企画・開催している。著書に『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社)
小林さやかさん
1988年生まれ。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(坪田信貴著、KADOKAWA)の主人公であるビリギャル本人。中学時代は素行不良で何度も停学になり学校の校長に「人間のクズ」と呼ばれ、高2の夏には小学4年レベルの学力だった。塾講師・坪田信貴氏と出会って1年半で偏差値を40上げ、慶応義塾大学に現役で合格。現在は講演、学生や親向けのイベントやセミナーの企画運営などで活動中。2019年3月に初の著書「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)を出版。19年4月からは聖心女子大学大学院で教育学を研究している。
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