足元の成果を上げることに一生懸命になるあまり、難易度が高い仕事やリスクを伴う仕事にチャレンジすることに前向きでない、または機会を創出できていない社員は多いものです。定期的にチャレンジする機会があるか、チャレンジすることに対して社員がワクワクしているか、チャレンジした結果失敗したとしてもそれを良しとする雰囲気があるか、といった環境を、会社が率先してつくっていくことが大切になります。

サイバーエージェントの行動指針「Mission Statement」の中に「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを。」という言葉があります。毎年多数の子会社や新規事業が立ち上がり、手を挙げた者に任せていく当社のカルチャーを象徴する言葉の一つです。「チャレンジした結果のセカンドチャンス」という雰囲気をつくっていくのは、一朝一夕でできることではありませんが、こういう風土をつくらずしてチャレンジの回数だけを増やしていくことのほうが困難です。

トップダウンで「チャレンジしろ」とだけ言っても社員のモチベーションを上げることは難しく、毎月、毎四半期といった期間中にどのくらいチャレンジを生み出せたかを自問自答する機会を増やすなど、会社独自の工夫をつくっていくことが必要です。

会社として「女性活躍」の場をどうつくっていくか?

先日、「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%程度にする」という政府の目標が、結果的に17年たっても達成できず、しかも1割程度にしか達しなかった、というニュースが話題になりました。

なぜこうなったのかを考えたときに、まず「お手本となる事例が極端に少ない」点が挙げられます。まったく同じ能力、同じ環境、同じ価値観の人はいないことはわかっているのに、なぜか「同じような人」を探して共通点を見いだし、自分のキャリアのお手本とすることで、あの人のようにやればいいんだという安心感をもつ人は多いのです。

石田さんは会社が女性活躍の場をつくる必要があると主張する(写真はイメージ=PIXTA)

逆に言うと、事例がないと不安になる人が多く、まだ創業間もない頃のサイバーエージェントでも、能力はあるのに管理職になりたがらない女性社員は多くいました。

もし、まったく女性リーダーがいない状態からのスタートであれば、あえて乱暴な言い方をしますが、最初は無理やりにでも事例をつくっていくしかないと思います。まだ実力が足りない、管理職の器ではないと思っても、信じて任せていくことが重要です。

リーダータイプではないと本人も上司も決めつけてしまっているケースもありますが、いろいろなタイプのリーダーがいていいはずです。まずは意思決定の機会を増やしてみたり、今よりもジョブサイズの大きなミッションを少しずつ任せてみたりすることからスタートするのがいいのではないかと思います。

女性にはライフステージの変化によって、まだまだ「子育てか仕事か」「介護か仕事か」などを選ばなければいけない状況があります。女性とはこうすべき、母親ならこうするべきという根強い役割意識が根本的に変わっていないことが、女性リーダーを目指す人、またはすでにリーダーになっている人にとっても、大きな壁となって立ちはだかっています。

このような問題には会社として仕組みをつくる必要がありますが、今回のニュースでも度々声が上がったように、ただの「数合わせ感」には誰もが違和感を覚えるはずです。誘導しすぎたり、恣意的な数合わせ対策はしないほうが良いと思います。

ちょうど女性活躍推進の流れにあって、時間の制約の中で働いてきた女性リーダーにとっては、「生産性高く働く」という点においてプロフェッショナルな人が多いです。数値目標を置いて無理やり帳尻を合わせにいくよりも、女性社員の得意な領域、女性社員にしかない視点やアイデアなどに着眼し、本質的な女性リーダーを生み出す環境を整えていくことのほうが大事ではないかと思います。

社員が働く上で障害になっていることを取り除き、男女問わず誰もが能力を発揮しながら働きやすい環境を整えていくことこそが、女性リーダー輩出の大きな壁を取り払う一つの有効な手段ではないでしょうか。

石田裕子
2004年慶応大卒、サイバーエージェント入社。インターネット広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、スマートフォン向けAmebaのプロデューサーを経て、13年にパシャオク社長。14年Woman&Crowdを設立し社長。16年よりサイバーエージェント執行役員、20年に同社専務執行役員
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