2020/9/5

いきいき職場のつくり方

これまでなら、大きなイベントがあれば一目瞭然ですので、社内で手分けして手伝ってもらうこともしばしばだったといいます。しかし現在は在宅勤務ということもあり、「全部ウェブだから大変じゃないでしょ」と理解されなかったといいます。

実際は各方面の関係者との調整や広報・宣伝、ウェブのデザインなど、やらなければならないことは山積。協力してくれる人は誰もいないなか、イライラしたり、夜眠れなくなったり、ドキドキするようになりました。

仕事量が増えた結果、残業時間はこれまでを大きく上回り、月間80時間以上になっていました。

産業医として面談した結果、休職には至らなかったものの、月間の残業時間を20時間以内に制限すると同時に、病院の心療内科などを受診するように指導しました。

孤立が悪循環招く

IT関係企業に入社したばかりの20歳代男性の事例です。

入社以来ほぼ出社することなく、テレワークによる勤務が続いていました。与えられた課題をこなすことができず、連絡をとれないことがしばしばあったことから、上司から産業医の面談を受けるように指示されました。

話を聞いてみると、不眠や倦怠感に悩まされているということでした。テレワークだと、先輩から教えてもらった内容がよく分からなくても、聞き返すことができないといいます。何度も同じことを聞くと、怒られてしまうのではないかと思い、そのまま放置してしまったというのです。その結果、与えられた課題ができず、悪循環に陥ってしまったようでした。

本人が「体調が悪いので休職したい」と訴えることから、その旨を書き添えた紹介状を用意して、心療内科を受診するように助言しました。結果、適応障害と診断され、現在は休職しています。

求められる寛容

コロナ禍の長期化で、メンタル不調を訴える人が目に見えて増えているようです。同じ職場にいれば、すぐに分かったような不調も、在宅勤務などで見えにくくなっています。出社することができていれば、周りにいる同僚に、分からないことを気軽に聞いたり、休憩時間には世間話をしてストレス発散したりできたはずです。

こんな状況だからこそ、職場では同僚のささいな変化も見逃さず、理解と寛容さをもって、対応することが必要です。真の意味でのニューノーマル(新常態)な働き方の定着が望まれるところです。

※紹介した事例は個人を特定できないように一部を変更しています。

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

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