違和感をうやむやにしない LINE出沢氏「問う力」「ネット興亡記」に学ぶサバイバル術 (6)

――ライブドアが世間を騒がすようになります。実像からかけ離れる危うさを感じませんでしたか。

「常に違和感がありました。M&A(合併・買収)だ、時価総額1位だとか、球団だ、政治だと。世界一になるなら何でもありと、急に戦線が拡大していきました。良い悪いではなく、手堅く稼ぐ仕事をしていた身からすると、『今は大赤字でも数年後には大きくなる』とか資本市場の評価をうまく使ってレバレッジをかけるやり方は、正直体感として理解できませんでした」

――2006年1月、六本木ヒルズにある本社に東京地検特捜部が強制捜査に入りました。その渦中で会社を去る選択肢はなかったのでしょうか。

「執行役員だったので一定の責任はあるのかな、辞めるべきかと思いつつ、混乱している中である程度の方向性を出す義務があるという、交錯した思いでした。当時の私の認識ではエンジニアがめちゃめちゃ強い会社でした。日本のインターネット企業は銀行マンや営業などビジネス出身の方が多かった中で、ライブドアはエンジニア出身の企業でしたし、意識的にそういうカルチャーをつくろうとしていました。実際、それに引かれて良いエンジニアが集まり、事件に関係なく続いていました。それを守りたいと思っていました」

――飛ぶ鳥を落とす勢いから、逆回転していく経営を立て直すことになります。

「その時は、結構シンプルでした。我々は色々とやりすぎていたので、強みのエンジニアリングを生かせる領域にフォーカスしました。いったんは縮小均衡になるかもしれないけど、そこから大きく成長するんだと。それまで仕組みを整えるより、とにかく(新しいことを)始めようというカルチャーでした。社内的に人事や評価の仕組みなど不平不満がたまっていました。みんなが納得して気持ちよく働けるまともな環境をつくろうというのが裏側にありました」

「(社長を)引き受けるまで逡巡(しゅんじゅん)もありましたが、やるのはそれほど難しくないだろうというのは分かっていました。なぜなら、非常に優秀な人材、特にエンジニアはほぼ無傷で残っていました。事業自体は健全で、色々なことをやりすぎているのでコストが重く赤字というだけです。逆に、つらいのは再建から先でした。黒字までは、危機的状況の中で『皆で乗り越えよう』と一致団結しやすいですよね。危機の状況はマネジメントしやすい。いったん黒字化した後は、次の山はどこなんだと。正解がなくて色々なパターンがある。私の苦しみはそこからの方が大きかったです」

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