米政府やIT企業も導入 トヨタウェイはどこまで広がるトヨタプロダクションシステム・サポートセンター(TSSC)バイスプレジデント ジェイミー・ボニーニ氏(下)

TSSCは全米の様々な現場でトヨタ生産方式の指導、普及を進めている(米テキサス州のNPO法人)
TSSCは全米の様々な現場でトヨタ生産方式の指導、普及を進めている(米テキサス州のNPO法人)

日本を代表する企業として世界の注目を集め続けるトヨタ自動車。とりわけその価値観の中核にあるトヨタ生産方式(TPS)は、ハーバードビジネススクールをはじめ多くの経営大学院で教材となるなど、世界に与えた影響は大きい。米国のビジネス最前線でTPSと向き合うキーマン3人に、作家・コンサルタントの佐藤智恵氏が話を聞いた。2人目のキーマンは、北米でトヨタ生産方式の普及活動を進めるNPO法人、トヨタプロダクションシステム・サポートセンター(TSSC)でバイスプレジデントを務めるジェイミー・ボニーニ氏だ。

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「問題を先に報告する」が難しい

佐藤 ジェイミーさんは現在、TSSCの一員として「トヨタ生産方式」をアメリカ全土に広める活動を続けています。アメリカの人々にとって特に難しいのは問題を先に報告することだと聞いていますが、トヨタ生産方式をアメリカの組織や企業に指導するとき、どのようにそのハードルを乗り越えているのでしょうか。

ボニーニ まずは言葉で説明して、トヨタ生産方式の価値を理解してもらいます。「私たちはこれから『トヨタ生産方式』というスタンダードにそって、オペレーションを行っていきます。皆さんがスタンダードからはずれていることに気づいたらお知らせしますし、皆さんも問題を見つけたらすぐに私たちに知らせてください。ともに問題解決に取り組めば、よりよい結果が出るでしょう」と。しかし、その価値をわかってもらうのに時間がかかるのは事実です。やはり何度も丁寧に説明しないとわかってもらえません。

TSSCバイスプレジデントのジェイミー・ボニーニ氏

次に組織の中で実証実験エリアをつくります。10人から15人のチームを1つつくり、そこだけトヨタ生産方式を導入し、その価値を実感してもらうのです。ところが私たちが「ここのエリアで仕事をしている人たちは、問題を報告すると評価されることとします。私たちが紹介する様々なツールを使って、問題を知らせてください」と言っても、「問題を報告するなんて怖いです」「アンドンのひもをひきたくないです(筆者注:問題があったことを関係者全員に知らせ、オペレーションをとめること)」というような人が必ず出てきます。そういう場合は、トヨタのスタッフと一緒にやることからはじめます。

「アンドンのひもをひっぱってください」とお願いする限りは、「ひっぱっても大丈夫だ」と信じられる文化があることが前提となります。失敗を報告しても罰せられないことをわかってもらう必要があるのです。言葉で伝えて、やり方を示して、さらに一緒にやる。これが基本です。

スタンダードに従うのに慣れないアメリカ人

トヨタ生産方式を確立した大野耐一氏(トヨタ自動車提供)

佐藤 『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして―』(大野耐一著、ダイヤモンド社)には、「トヨタ生産方式なるものは、戦後、日本の自動車工業が背負った宿命、すなわち“多種少量生産”という市場の制約のなかから生まれてきたものです」と書かれています。ジェイミーさんから見て、トヨタ生産方式は日本的だと思いますか。それとも普遍的なものでしょうか。

ボニーニ 私は普遍的なものだと思います。ただし、トヨタ生産方式を初めて学ぶ社外のアメリカ人に「普遍的だ」といってもわかってもらえないので、「トヨタの組織文化はトヨタ独自のものだが、日本文化に由来している部分もいくつかある」という点も伝えています。

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