「外飲みが好き」という人が抱える問題

では、この状況下で、実際に酒量が増えやすいのはどういう人なのだろうか?

「最も危険なのは、アルコール依存症をはじめとする精神疾患を抱えている方です。そして、監視の目がない一人暮らしも、ストッパーがないので危ないですね。また、ストレス解消のツールがお酒で、これまで外飲みがメインだった方が、終電を気にしなくてずっと飲んでしまうのも問題です」(吉本さん)

「外飲み」のストレス解消効果は、「オンライン飲み」でも代替できるか? (c)paylessimages-123RF

ちなみに、外飲みがストレス解消の一助になっているのは、筆者もそうだ。 外飲みは、単に非日常の場所で酒を飲むことがストレス解消になるだけでなく、誰かと一緒に愚痴を言ったり、バカ話をすることが心のデトックスになり、明日への活力となる。

それが“オンライン飲み”でも実現できるかと思い、試しにお気に入りの焼き鳥屋のテークアウトと酒を用意し、親しい仲間とやってみたが、通信状態が安定しなかったり、画質が悪かったりして、イマイチ盛り上がれなかった。「またねー」と通信を切った後、食べ終わった食器を自分で片付けるのも何か白ける。悪くはないのだが、リアルな外飲みと比べるとどこか物足りないのだ。

緊急事態宣言が解除された後、知り合いのSNSの投稿では、「やっぱり外飲みはサイコー」といったコメントが目立った。早く安心して外飲みができる日々が戻ってきてほしいものだ。

ストレスをためやすい人は酒量のコントロールを

話を戻すと、吉本さんは、「いわゆる『タイプA』と言われる方も危ない」とも言う。

「タイプAとは心理学の用語で、せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的な行動パターンを示す人を指します。このタイプは喫煙、多量飲酒などに陥りやすく、かつ日常的なストレスを受けやすい傾向にあります。協調性が求められる日本において、タイプAの行動パターンは表に出しにくいこともあり、外飲みでストレスを発散している人もいると考えられます」(吉本さん)

「酒量が増えたとしても、お酒を飲んで楽しい気分でいられるのであればまだいいのです。怖いのは、酒量が増えるにつれ、『オレなんかどうせダメだ』とネガティブになってしまう人。罪悪感や自責の念を払拭するために、さらにお酒を追加するようになると、ますます危ない」(吉本さん)

楽しいお酒なら良いが、逆に落ち込んでしまったり、「どうしてこんなに飲んでしまうんだろう」と罪悪感を持つようになると、かなりの危険信号。WHOが作成したアルコール依存症のセルフチェックには、「過去1年間に飲酒後、罪悪感や自責の念にかられたことが、どのくらいの頻度でありましたか?」という設問もあるという。

「緊急事態宣言が解除されても、感染拡大防止のため、今後も家にいる時間が長くなるのは必然です。アフター・コロナの生活様式に合わせた飲み方、酒量を今のうちに考えなければなりません。特に、飲んで罪悪感を抱いてしまうような方の場合、自死に至るケースもないとは限りません」(吉本さん)

そ、それは聞き捨てならない…。吉本さんの言う通り、今のうちに酒量をコントロールしておくべきだろう。「自粛生活で酒量が増えている = アルコール依存症へのプレリュード」と真剣に捉え、対策を練ることが必須である。

次回は酒量を減らす具体的な方法を、引き続き吉本さんに伺っていこう。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2020年6月5日付記事を再構成]

吉本 尚さん
筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授/附属病院 総合診療科。2004年筑波大学医学専門学群(当時)卒業。北海道勤医協中央病院、岡山家庭医療センター、三重大学家庭医療学講座を経て、2014年から筑波大学で勤務。東日本大震災を契機に「WHO のアルコール関連問題のスクリーニングおよび介入に関する資料」を翻訳するなど、アルコール問題に本格的に取り組み始める。アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークの幹事として、プライマリ・ケアを担当する立場からアルコール対策に関わる。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・家庭医療指導医。2014年10月、第3回「明日の象徴」医師部門を受賞。

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