2020/6/15

腕時計通の憧れ 複雑機構を搭載、超高価な新作ラグスポ

多くの名門ブランドが、ラグジュアリースポーツこそがこれからの主力ジャンルと捉えているようで、今年もトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターといった憧れの複雑機構を搭載したコレクション価値の高い新作が続々登場している。おいそれと手を出せる価格ではないが、こんな時計が腕にあればと夢想するだけでも楽しい。もちろん思い切って入手すれば周囲からの羨望のまなざしが痛いだろう。そんな現代最強のステータスウオッチをご紹介する。

ブレゲ 「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」

マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887 ケース:44.9mm、18Kローズゴールド、10気圧防水、シースルーバック 駆動装置:機械式自動巻き、パワーリザーブ約80時間 税別価格:2560万8000円

「マリーン」は、創業者アブラアン-ルイ・ブレゲが製作に尽力したフランス海軍用マリンクロノメーター(航海用精密時計)にヒントを得たコレクション。別格級のラグジュアリースボーツとして人気を博すが、今作ではそこに永久カレンダーのほか、時計精度の要であるテンプを重力の影響から解き放つ“トゥールビヨン”、さらに普段用いる平均太陽時と地球の自転に基づく真太陽時と差を示す“均時差表示(先端に太陽マークのついた第2分針がそれ)”まで載せた。そんな超複雑モデルでありながら、盤面をすっきりとまとめ上げ、サイズ的にもスーツスタイルにもしっくりなじむバランスに仕上げたのがさすが。まさに好事家向けの超複雑モデルだ。

ブルガリ 「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」

オクト フィニッシモ ミニッツリピーター ケース:40mm、18Kピンクゴールド製、30m防水、シースルーバック 駆動装置:機械式手巻き、パワーリザーブ約42時間 税別価格:1900万円(予価)

「オクト フィニッシモ」は、故ジェラルド・ジェンタ氏がデザインしたブルガリのアイコン的腕時計「オクト」に自社開発の薄型ムーブメントを載せ、芸術的な多面体構造ケースを手首に吸い付くスリムなプロポーションに仕立て直したコレクション。デビューの2014年にはトゥールビヨンで、16年には音で時刻を知らせるミニッツリピーターで、さらに17年はシンプルな3針モデルで、それぞれ世界最薄の記録を樹立している。ご覧の新作は、ミニッツリピーター搭載機の派生バージョンで、素材にリッチな18Kピンクゴールドを採用したモデル。ゴールドは厚みの出やすい素材だが、ケース厚を16年登場のチタンケース製より僅か0.05mmアップの6.9mmに止めたのがすごい。なおミニッツリピーターは音色の美しさや大きさも大切だが、ブルガリは文字盤のインデックスやインダイヤルをスリット状として音響効果を高めている。その澄みきった音色は運よく購入できた方だけのおたのしみだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン 「オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン」

オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン ケース:41.5mm、18Kピンクゴールド製、50m防水、両面シースルー 駆動装置:機械式自動巻き、パワーリザーブ約40時間 インターチェンジャブルストラップ付属 時価(参考価格1288万円) ブティック限定 今秋発売予定

1755年にジュネーブで創業して以来一度も歴史が途絶えることのない時計界最古のブランド、ヴァシュロン・コンスタンタン。「オーヴァーシーズ」はそんな名門が96年から展開するシリーズだ。前身は77年に登場した薄型スポーツ時計の名作「222」で、同機が積んでいた薄型自動巻きムーブメントと同系列のCal.1120(開発は1960年代)を、現行の「オーヴァーシーズ・エクストラフラット」が継承している。上で紹介した新作は、16年にデビューした「オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット」のフルスケルトンバージョン。Cal.1120に、2100年3月1日まで修正不要な永久カレンダーを組み込んだ超複雑ムーブメント(Cal.1120QP)の美しい造形を、巧みなオープンワークにより表と裏で芸術的に見せつけた。ケース厚8.1mmながら圧倒的な華やぎがあり、成功者の腕にふさわしい薄型コンプリケーションウォッチといえよう。

(ライター 吉田巌:十万馬力)


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