ホンダの大黒柱コンパクト、フィットが4代目にフルモデルチェンジした。新型は、電動風味を強調した2モーターハイブリッドのライバル、日産ノートe-POWERとはウラハラの、優しい味付けだ。なぜホンダは、童話『北風と太陽』でいうところの太陽を選んだのか? 商品開発責任者の田中健樹氏を小沢コージ氏が直撃した。
好調e-POWERに優しいおかゆ風味で立ち向かう
小沢 新型フィットハイブリッドに改めて公道で試乗して思いましたが、実は結構な勝負をしていますね。
田中 (笑)どういう意味ですか?
小沢 あのe:HEVっていうハイブリッドシステムが、ここまで人に優しい味付けだとは思わなかった。去年テストコースで乗ったときも「乗り心地がソフトだな」「加速がヤケに滑らかだな」とは思ったんですけど、それが公道で走るとよくわかる。
田中 ありがとうございます。やはり走りの細かい部分は公道の方がよくわかるのかもしれません。
小沢 特に日産ノートe-POWERと比べてのテイストの違いですよ。ご存じだとは思いますがノートe-POWERは、3年連続でコンパクトカー国内販売ナンバーワンになったじゃないですか。アレは露骨に2モーターハイブリッドの電動加速を強調した味わいに、いわば「ひとふみぼれ」してウケてるのは明白。実際、アクセルを踏んだ瞬間にあり得ないタイミングで加速が立ち上がる。まさにコンマ数秒、料理に例えれば、舌がピリピリするくらいに刺激的な電動風味。しかしフィットのe:HEVは同じ2モーターハイブリッドでありながら、そういうテイストをまるで出してない。
田中 そうかもしれません。
小沢 加速はほぼモーターを使うし、やろうと思えばやれるのに、普通のガソリン車以上に唐突感が減らしてあって全域滑らか。乗り心地も極めて滑らかで、ある意味、おかゆを食べているみたいです。特に高速だとそれがよくわかる。
田中 あえてそうしています。
小沢 なぜなんです? 日産e-POWERはもちろん、今全米で大人気のテスラにしろ、電動カーは異様なほど電動感を強調してウケるのが鉄則じゃないですか。そこにポルシェはもちろん、ジャガーも追随する時代に、ホンダは人への優しさで勝負する。超正論でいくってことですか?
田中 そうですよ、まさに。
小沢 いったいなぜ?
