――結果につながった要因は?

やはりチーム力です。もちろんドライバーも求められる最高の仕事をしなくてはなりませんが、そこに持っていくまでの準備とチーム力が物を言います。走るのはマシンだけれど、それを動かし力を発揮するのは人間。ドライバーと勝利を目指すんだという気持ちがエネルギーやモチベーションに変わり、質の高い仕事につながる。運も含めて一つでも欠けてしまったら優勝できません。

――チーム力を上げるために佐藤さん自身、何をされましたか?

スタッフに敬意を示して、ともにやっていくという覚悟や求心力が大事になります。チームレベルをみんなで上げていく作業はとても面白い半面、意見が分かれて一筋縄ではいかないこともたくさんある。でも僕は挑戦者としてこの世界に入ったので、郷に入れば郷に従えではないけれど、エンジニアのやり方をまずは見てみようと思いました。もちろん、結果が悪くて最初に切られるのはドライバーなので、ずっと受け身でいるわけにはいかない。だからある程度、彼らのやり方を把握し、彼らのやり方にリスペクトを示した上で、僕のアイデアをざっと机の上に並べます。互いの歩み寄りでベストな答えを見つけてチャレンジしてみるのです。

エンジニアも、机上の計算だけでドライバーの意見を否定はしません。うまくいけば一つの成功という経験値をゲットでき、うまくいかなくても、さらなる提案をして挑戦し続けるだけ。自身の責任や緊張感は相当大きいですが、だからこそ絶対に結果を出すという気迫でハンドルを握ることができます。

成功したときは、僕に向けられたスタッフの目が変わります。次も僕の意見を聞いてみようかと。コミュニケーションを取り、結果を常に出し続ける努力が、「このドライバーのために、チームのために仕事をしよう」というスタッフの気持ちにつながります。

今シーズンはシリーズチャンピオンを狙える

――経験値の多いベテランの方が有利なのでしょうか?

インディカーもドライバーの若年化が進んでいて10代もいます。ストリートコース、ロードコースは経験があるから勝つというわけでもない。でも、オーバルコースはレース展開も含めて経験が必要のように思います。僕自身、最初はインディカーのドライバーとして足りない部分があったし、毎年乗り続けて、より速く、より正確なドライビングスキルの引き出しが増えてきました。若年化が進む中、自分なりに毎年進化を重ねて、10年という年月を乗り越えてきました。

――今シーズンの目標は?

1勝、2勝ではもう誰も驚かないでしょうね。それだけ僕に対する期待値が上がったのは幸せなこと。いかに大変なことかは自分が一番分かっているので軽々しくは言えないけれども、今シーズンの目標は3勝以上を目指します。昨年のショートオーバルコースでの勝利で、スーパースピードウェイ、市街地コース、常設のサーキットであるロードコースの4種類全てのタイプのコースで勝つことができた、現役6人の仲間入りを果たせました。究極の目標としては、シリーズチャンピオン以外に狙うものはないです。

佐藤琢磨
レーシングドライバー。1977年東京都生まれ。高校時代から自転車競技を始め、インターハイ、全日本学生選手権優勝。鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラー(SRS-F)に入学し首席で卒業。単身渡英して、英国F3選手権に参戦し、2001年に同シリーズのタイトルを獲得。02年F1デビュー。04年米国グランプリで3位となり表彰台に上がる。06年スーパーアグリ(SA)F1チームに移籍したが2年半の活動後、同チームが撤退。10年米国最高峰のフォーミュラカーレース「インディカー・シリーズ」に参戦。13年第3戦で念願の初優勝。17年第6戦米インディアナポリスのインディ500で悲願の日本人初優勝。18年にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍。19年は2勝を達成。

(ライター 高島三幸、写真 厚地健太郎)