富士フイルムは両利きの経営 ハーバードが見た開拓力ハーバードビジネススクール名誉教授 マイケル・タッシュマン氏(上)

佐藤 タッシュマン教授は経営者養成を目的としたエグゼクティブ講座AMP(アドバンスド・マネジメント・プログラム)で教壇に立たれていますが、「両利きの経営」についてはどのようなことを教えているのですか。

タッシュマン 本書の内容を包括的に教えています。「探索と深化」からはじまり、「イノベーションストリーム*」「両利きの経営」「リーダーの役割」「変革リーダシップ」と続きます。

*筆者注:「イノベーションストリーム」=機械式時計→クオーツ時計、真空管→トランジスタ、紙の新聞→オンラインニュースなど、既存の組織能力をもとに、新たな製品・サービスを生み出していく流れ。漸進型イノベーション、構築型イノベーション、不連続型イノベーションの3つに分類される。

佐藤 「イノベーションストリーム」を見てみると、「事業の多角化」のようにも見えるのですが、「事業の多角化」と「両利きの経営」の違いは何ですか。

既存事業の組織能力から特定の能力を抽出

タッシュマン 富士フイルムのケースでご説明しましょう。本書でも紹介しましたが、富士フイルムの変革は、両利きの経営を実践して成功した典型的な事例です。富士フイルムが実践したことは、「事業の多角化」に見えるかもしれませんが、実際は違います。

もともと富士フイルムにはコア事業であった写真ビジネスを遂行する組織能力がありました。その組織能力を分析・再定義して「この技術はこう使える」「この人材はここへ使える」と新領域を開拓していったのです。

ホンダについても同じことがいえます。ホンダはエンジンを製造してきた組織能力を、航空機、船外機などの新規事業に生かしてきました。両利きの経営の本質は、企業がもつ組織能力の中から、特定の能力を抽出し、それらを新しいビジネスの開発につなげていくことです。

(下)「現場も両利き」トヨタのすごみ ハーバードの視点 >>

マイケル・L・タッシュマン Michael L. Tushman
ハーバードビジネススクール名誉教授。専門は経営管理(組織行動)。同校エグゼクティブプログラムAMP(アドバンスド・マネジメント・プログラム)ファカルティ・チェアー。「イノベーションと組織効率性」「戦略的イノベーションと組織変革」などをテーマとしたリーダーシップの授業を多数教える。技術変革、リーダーシップ、組織適応の研究で世界的に知られ、現在、世界各国でコンサルティング、講演、マネジメント研修を行う。主な共著書に「両利きの経営―『二兎を追う』戦略が未来を切り拓く」(東洋経済新報社)、「戦略優位のイノベーション―組織変革と再生への実践ガイド」(ダイヤモンド社)。

両利きの経営

著者 : チャールズ・A. オライリー, マイケル・L. タッシュマン
出版 : 東洋経済新報社
価格 : 2,592円 (税込み)

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