富士フイルムは両利きの経営 ハーバードが見た開拓力ハーバードビジネススクール名誉教授 マイケル・タッシュマン氏(上)

ハーバードビジネススクール名誉教授のマイケル・タッシュマン氏 (C)Roger Rovira for Harvard Business School
ハーバードビジネススクール名誉教授のマイケル・タッシュマン氏 (C)Roger Rovira for Harvard Business School

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。13人目、最後に登場するのは、2019年に邦訳が刊行された「両利きの経営」の著者の一人、マイケル・タッシュマン名誉教授だ。

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佐藤 「両利きの経営―『二兎を追う』戦略が未来を切り拓く(Lead and Disrupt: How to Solve the Innovator's Dilemma)」が日本企業の経営者の間で人気を集めています。この本を書こうと思った動機は何ですか。

タッシュマン 私は長年、スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・オライリー教授とハーバードビジネススクールの博士課程の学生とともに、「既存の大企業がいかに技術変革に向き合い、技術移行の過程で進化してきたのか」をテーマに研究してきました。その目的は成熟企業が今後も生存し、成長していくために役立つ知識を経営幹部や管理職に提供することです。

IBMと富士フイルムの共通点

ハーバードビジネススクール名誉教授 マイケル・タッシュマン氏 (C)Kent Dayton for Harvard Business School

技術変革が起こったとき、必ず生き残れる企業と生き残れない企業が出てきます。その違いはどこにあるのでしょうか。

私たちはこれまでIBM、富士フイルムから中国企業のハイアールまで、多種多様な企業の事例を研究してきましたが、技術変革の波にさらされても進化し続ける企業には1つの共通点があることに気づきました。それは経営幹部が「先導と破壊(Lead and Disrupt)」を同時に行う経営を実践していることです。言いかえれば、「新領域の探索(explore)」と「成熟事業の深化(exploit)」を両輪でまわしているのです。こうしたことを伝えるに足る十分な知識や事例が蓄積したので、「先導と破壊」というテーマで本を書こうと思ったのです。

佐藤 アメリカではスタートアップ企業がメディアの注目を集めていますし、ハーバードでも多くの教材が書かれています。なぜあえて既存の大企業を研究しているのですか。

タッシュマン スタートアップ企業の進化よりも、歴史の長い既存の企業の進化の過程により興味があるからです。特定の製品やサービスで成功してきた企業が、その成功に甘んじることなく、いかに技術の変化に適応し、イノベーションを創造し続けていくのか。これこそ私たちが解くべき問題だと思っています。

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