池上彰氏から若者へ 人生の針路を対話から見つけよう『池上彰の 未来を拓く君たちへ』

どう学び、どう働くべきかを考えるための「人生読本」
どう学び、どう働くべきかを考えるための「人生読本」

東京工業大学で教壇に立つジャーナリストの池上彰氏は、社会へ出る若者たちにむけたメッセージの発信するコラム連載を日本経済新聞で続けている。今回紹介する『池上彰の 未来を拓く君たちへ』は同コラムをまとめて加筆した1冊だ。自分らしく生きていくためには、どう学び、どう働くべきか――。人生の課題のありかと解決への糸口の探し方を「池上流」にわかりやすく示している。

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著者の池上彰氏は1950年に長野県松本市で生まれました。慶応義塾大学を卒業した後73年にNHKに入局します。報道記者として事件や災害、消費者問題、教育問題などを担当してきました。94年からは11年間にわたって「週刊こどもニュース」のお父さん役として人気を博しました。2005年からフリーになり、ニュース解説や選挙報道などで活躍しています。主な著書は『池上彰のやさしい経済学 1.2』『池上彰の18歳からの教養講座』など。本書は2018年4月に刊行した同名書を文庫化したものです

積もり積もれば大きな時間

池上氏は記者としてキャリアを地方都市の松江市でスタートしました。現場を駆けずり回り、上司から叱られ、取材先から教えられるなどしながら社会人としての基礎力を身につけていきました。池上青年の「修業時代」を振り返ることから本書は始まります。

これから社会へ出る人、あるいは新しく社会へ出たばかりの人たちに向けたメッセージの一つが「時間を大切にしましょう」というアドバイスです。すきま時間を有効に使って情報収集に努めるよう促します。一日のうちに何気なく過ごしてしまいそうな時間も、積もり積もれば大きな時間になるからです。

その際、あなたに大切にしてほしいことは、常にアンテナを張り、感度を高めていく工夫です。得意不得意ではなく、関心のあるテーマを広げ、引き出しを増やしていくことです。仕事に直接つながるテーマでもよいのです。漫然とスマートフォンの画面を眺めているなんて、時間がもったいないじゃないですか。
(CHAPTER 3 | 名刺で仕事をするな 41ページ)

「ポスト・トゥルース」を生んだ要因

池上彰氏(撮影:佐々木孝憲)

このところ、ビジネス書の売れ行きが好調だといいます。若いビジネスパーソンの間で「学び」に対する意識が高まっていることも背景にありそうです。あなたは、どうですか。ただ漫然と本を読み散らかしてはいませんか。あるいは、スマホを通じて大量に流れてくるニュースや情報に振り回されてはいませんか。

池上氏は「自分の頭で考えること」がなによりも大切だと繰り返し指摘します。そのためには教養を深めることが欠かせません。特にデジタル・トラスフォーメーション(DX)の時代には、しっかりとした自分の判断軸をもつことが極めて重要です。

「フェイクニュース」や「ポスト・トゥルース」を生んだ要因のひとつには、スマホやSNS(交流サイト)の急速な普及があるかもしれません。刻々と画面から伝わってくる情報の真偽や中身を確かめる前に、印象やムードに乗り、「見て、信じる」習慣が根付いてしまったのではないかと危惧しています。
ネットやスマホの存在が悪いというわけではありません。大事なのはその使い方であり、情報の見極め方なのです。大切なことは、情報の真偽を見極められる視点や判断力を養うことです。
(CHAPTER 10 | “真実”をめぐる攻防 113~114ページ)
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