池上彰氏から若者へ 人生の針路を対話から見つけよう『池上彰の 未来を拓く君たちへ』

対話の中から生まれる「学び」

ジャーナリストである池上さんの最も得意とする分野は、社会問題です。日々の暮らしで、社会に対してどのようなを姿勢で向き合うべきなのでしょうか。ここでは、最近話題になっている憲法改正について池上氏のが自身の考え方を記している部分を紹介します。

戦後の日本は、「戦争放棄、軍隊を持たない」という姿勢を世界へ示してきました。歴代内閣は「自衛隊は軍隊ではありませんから憲法違反ではありません」と言い続けてきました。ところが、ふと気づいたら自衛隊の規模や力がどんどん大きくなり、世界からは「軍隊」と認識されるまでに成長した。それなら、実態に合うように「憲法を変えればいいじゃないか」という議論が出てきました。本質的な議論を避けながら実態を変えて追認する。その繰り返しだった気がします。
現実の追認ではなく、国家のかたちを決める憲法のあり方を考える。日本の針路を考えるために、憲法の歩みを知り、改めて議論することは今からでも決して遅くはないのです。
(CHAPTER 26 | 憲法の歩みを改めて知る 257ページ)

本書には、池上氏が教え子である大学生や高校生らを集めて行ったディスカッションの模様も数多く収録されています。課題図書を読み込んで議論する「読書会」の様子も掲載しています。

ギリシャのアリストテレス、ブッダ、孔子……。こうした先哲の例が示すように、古来、学問は対話の中からが生まれてきました。「池上流」の学びは対話をとても重視します。コミュニケーションを通じて思索を深める手法は、仕事を進める上でもとても役に立つと思います。

◆編集者からのひとこと 日本経済新聞出版社・桜井保幸

何のために働くのか? どう生きていけばいいのか? 学校の勉強は役に立つのか? これらは、だれもが時折頭の中をよぎる「問い」でしょう。でも、学校の先生はこうした疑問にはめったに答えてくれないだろうし、そもそもそんな質問を投げかける機会もなかったという人が多いかと思います。

ジャーナリストで東工大特命教授を務める著者は、こうした疑問に、記者時代の経験を紹介しながら、丁寧に答えていきます。

また、大学での「学び」とは、単に過去の研究や理論をうのみにすることではなく、自ら問いを立て、考え抜くことであり、その姿勢こそが、どんな変化にも耐えられる力を養うことにつながると言います。

10代、20代の若者も、もう若者でなくなった人も、ぜひ手にとってほしい本です。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。掲載は原則、隔週土曜日です。

池上彰の 未来を拓く君たちへ (日経ビジネス人文庫)

著者 : 池上 彰
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 880円 (税込み)

ビジネス書などの書評を紹介
注目記事
ビジネス書などの書評を紹介