2020/1/3

――就活を始める時期はいつごろがいいと思う? 学生時代をどう過ごすかも含めてアドバイスはありますか。

Dさん 僕が就活を始めたのは大学3年の6月でしたが、もう少し早く始めていたらよかったと思っています。というのも、3年生の冬ごろになってコンサル業界とか外資系企業という選択肢に初めて気づいたんですよ。もっと早く知っていれば受けられたかなあと思うこともありました。

Cさん 私は3年生の4月スタートでした。やはり、企業側も3年生に対しては本腰を入れてインターンなどを開催してくれます。比較的早くから活動したことで、早めに自分はベンチャー向きではないことにも気づきましたし。実は2年生のときにも合同説明会にもぐりこんでみたりしましたが、そこまでしなくてもよかったかなと思っています。

Bさん 僕が感じているのは、就活を始める時期というより、自分の考え方とかどんな仕事をするかといった方向性を、いつごろ固められるかが大事ということです。僕は大学院1年生の秋から10カ月間くらい就活しましたが、それだけの時間を使って自分の方向性を固めました。学部卒で就職した友人はいま、社会人2年目なんですよ。自分の方向性をちゃんと決めずに、ふわっと就活してしまった友人からいろいろ聞いていたのも、よかったかもしれないです。

内定者4人から話を聞く安田編集長(2019年12月、東京・大手町)

――ひと足先に社会人になった友人が、反面教師になったということ?

Bさん そうなんです。なんとなく有名な企業に就職した友人が、今になって葛藤している様子を見て、自分の方向性を考えました。友人から「この会社はやめておいたほうがいいよ」とか「CSR(企業の社会的責任)の分厚い本を読むと、いろんな企業の評価が書いてあるから参考になる」と教えてもらいました。「企業ごとに市場シェアを調べておくといいよ」って教えてくれたのも友人です。シェアが高い会社は自然と面白い仕事ができるチャンスが多いんじゃないかな、というアドバイスでした。僕が結局、ニッチな分野のメーカーに就職することに決めたのも、こうしたアドバイスがあったからです。

――後輩たちにエールを。

Bさん 学生時代はいろいろチャレンジできるので、(就活は)それをやり切ってみてからでもいいのかな、と。自分が楽しめるものを知って、それに近い仕事ができればいい。あと、いろんな社会人に話を聞いた方がいい。ネット上の情報だけではわからないところがあるので、手間はかかるけど、自分で足を運んで取った情報は間違いないと思う。3つ目は自分の方向性、軸をつかむこと。これは反省を込めて。

Dさん 僕が伝えたいのは、多少なりとも興味をもったことは足を運んで話を聞く現場主義。興味を持ったら即行動というスタンスですね。僕は最初、不動産業界に興味があったのですが、業界に勤める人に会って話を聞いたら、思い描いたのとは違うことがわかって、志望度が下がりました。

Cさん 就活中って、どうしてもヒートアップしがちです。セミナーなどに行くと「これからがんばるぞ」みたいになって、乗せられちゃう。企業を選ぶ段階で兄に言われたんです。「その選択は今だけじゃなくて、20代、30代を通じた自分の姿を落ち着いて考えたものなの」と。それは確かにそうだなと。

Aさん いろんな人と話すのが大事かな。自分と違う考えを持っている人と話す中で「自分はこうだな」と気づける。(就職先の条件も)「お金でしょ」とか「福利厚生でしょ」とか「やりたいことでしょ」とか、わちゃわちゃ話していると、自分一人で考えるより頭の中がすっきりしてきますよ。

考え抜いた上で柔軟に(安田編集長)
 今回の座談会で印象的だったのは「自分が何をしたいのか」をもっと考えておけばよかったという、少し後悔を含んだ感想が目立ったことだ。そこがあいまいだったから、内定は得られても自分が納得できる決断へ至るのに時間がかかってしまったという苦い体験から出たものだった。
 この反省の声は、これから就活にのぞむ学生にも記憶しておいてほしい。その上で、大切なことがもう一つあると思う。それは「自分が何をしたいのか」を考え抜いたうえで、それに縛られすぎないでほしいということ。答えはその後の経験で変わることもある。関心をもつことのなかったことに興味をひかれたり、自分らしさだと信じていたことが、案外そうでもないと思い知らされたりすることだって、きっとある。
 最初に思い描いた通りの就活ができた出席者はいなかった。だけど「失敗」とも口にしなかった。就活で行き詰まることがあったら、そんな先輩たちが残してくれたメッセージを思い出してほしい。

(文・構成 藤原仁美、安田亜紀代)

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