ウナギ・ワカサギが殺虫剤で激減 宍道湖の調査

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/12/2

「この研究は、ワカサギとウナギという商業的に重要な魚が激減した理由が、ネオニコチノイドにあることを強い説得力をもって示しています。なぜならこの間、ほかに考えられる要因は何も変化していないからです」と、オーストラリア、シドニー大学の生態毒性学者であるフランシスコ・サンチェス・バヨ氏は言う。

この研究では、殺虫剤の使用と漁獲量の激減との関連が示されただけだが、ネオニコチノイドを導入した途端にプランクトンと魚が減少していることは、ほかに説明のしようがないとサンチェス・バヨ氏は付け加える。例えば、ほかに原因として考えられる塩素イオン濃度、堆積物の成分、溶存酸素などの水質の指標には、さほど大きな変化はなかった。

水質汚染の専門家である米ラトガース大学のオラフ・ジェンセン氏は、大きなストレスを持続的にかけるネオニコチノイドの影響をこう説明する。「殺虫剤を毎年使用するのは、小規模な原油流出事故のような環境の撹乱を繰り返すようなものです」

EUでは屋外での使用が禁止に

ネオニコチノイドの大規模な生産が始まったのは1990年代だった。化学的にはニコチンに似た物質で、節足動物に対する毒性は強いが、哺乳類など、より大型の動物への毒性は弱いため、従来の殺虫剤よりも安全なものとして広く使われるようになった。この物質は、昆虫の神経系を麻痺させ、死に至らしめる。

しかし、ネオニコチノイドの研究が進むにつれ、思いがけない結果を招くケースが明らかになってきた。例えば、ある種のミツバチやチョウに有害で、EUでは、最も広く使われていたネオニコチノイドであるイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3種類を屋外で使用することが禁止されている。

その一方で、米パデュー大学の水界生態学者ジェイソン・ホバーマン氏は、ネオニコチノイドが淡水や海洋の生態系に及ぼす影響についての研究はあまりないと説明する。

「ネオニコチノイドの影響の研究は、陸上の生態系を中心に行われてきましたが、今回の研究で、水界生態系の食物網を変化させ、悪影響を及ぼすおそれがあることが明らかになりました」

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